「あーあ、見せつけてくれるよなぁ。はは、こっちまで照れるっつーの」
叩き落された手で自分の後頭部を掻いた西さんは、その視線を向こう側へと向ける。ついつい辿っていった視線の先には、騒音騒ぎのカシストで一人、静かに眠る匡子さんがいた。
「……え」
「ん?」
驚きに声を上げた俺の気持ちが分かったのか、苦笑を浮かべた西さんが再び自分で酒を注ぐ。
「お前ら見てるとな、俺もそういう気持ちになるってことだ」
「……西さん、匡子さんが……?」
「まぁな。体だけの関係だけど」
「かっ!?」
体だけ!? 動揺を隠せない俺の頭を慰めるように撫でていく玲央の手に若干平静を取り戻し、そっと西さんを覗き込む。
「なんだよその顔、誘ってんのか?」
「んなわけ「うわ、こわっ」……はい?」
んなわけないでしょ。そう言うはずだった俺の言葉を遮って苦い顔をする西さんの視線を辿るが、そこには平然とお粥を咀嚼する玲央しかいない。ということは、玲央が睨みでもしたのだろう。
「まぁ、あれだよな」
「え?」
お酒をあおった西さんがグラスをカウンターにそっと置く。
「冬だから余計人肌恋しくなるんだよな」
「……はぁ、」
「お前らみたいに毎日乳繰り合ってる奴らにゃ分かんねーだろうけどなー」
乳繰り合って……。なんだかオヤジくさい発言だなぁと呆れ顔を浮かべる俺に、けれど西さんは少しだけ寂しそうな、だけど嬉しそうな笑顔を向けていた。
それから酒瓶を担いで現れた司さんに手を引かれ、各自持参したプレゼント交換をやるぞー、なんて変な盛り上がりを見せる皆は笑顔だ。
その騒音に起きた匡子さんを介抱しながら、自分の隣に座らせた西さんと目が合えば悪い顔をされたが、輪になってプレゼントがくるくると回り始めた頃にはすっかり俺もはしゃいでしまって。
ネタとしか思えないセーラー服のコスプレを手に入れた新山さんが真面目にそれを着て現れ、当然のごとく仙堂さんから罵声とリアル暴力を受けた頃、楽しいクリスマスパーティーは終わりを迎えた。
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