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「ノエルを一目見た江藤司は、彼を利用して二年前の報復を考えました。
そもそも、我々警察を味方につけている江藤司が四条巴と敵対している組を日の下に引きずり出せなかった、その理由こそが問題だったのです。
お恥ずかしい話ですが、敵対している組にもね、警察のお仲間がいたんですよ」

「……」

「だから江藤司はノアに扮したノエルと敵対関係にあることを仄めかし、同時にノアがまたこの街に現れたことで困る輩をあぶり出しました」


最期の一枚をスポンジで洗い、仙堂さんに手渡す。男らしい骨ばった手にはマメが出来ている。


「今回、ノアが朝日向玲央を狙っていたり、ゲームとして捕えようとしたのは売人共をあぶり出す目的もありましたが、もともと江藤司は朝日向玲央も君も最後まで巻き込む気はなかったんですよ。
朝日向玲央は、普通にテレビに出ていたでしょう? 君があのマンションで過ごしていた間、彼は本当に撮影でこの街を離れていましたからね」

「……そう、ですか」

「すべては時間稼ぎだったんです。江藤司、新山刑事、そして自分が。敵対している組やそのお仲間である警察を引きずり出す証拠を得るための、時間稼ぎだったんですよ」


あえて詳細をぼかす言い草に、俺は目を伏せる。キュッと蛇口を締めた彼は、崩れることのない表情で俺を見つめていた。


「あの動画で、一つだけ気になっていたことがあるんです」

「なんでしょう」

「……俺は、あの人があの緑のカーデを着ていたから、だからあの日対峙した彼本人だと思い込みました。でも……よくよく考えれば、彼の頭部は色んなもので見え隠れしてました。あれは……」

「それは口に出さないほうがいい。あえて私が最後をぼかした理由なら、聡い君のことだ、分かるね?」

「…………はい」


仙堂さんは、きっとはじめから詳細を語る気はなかったのだ。
ただ彼は……彼は多分、今回動いていた全員にはそれぞれ理由があり、それを俺に分かって欲しかったのだ。彼は、フォローを入れる為、俺に話をしに来たのだ。




 


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