「みっともないですよ、格好悪いですよ。今の豹牙先輩は格好悪いです」
「……」
「でも、そんな先輩のことも、俺は好きですよ」
「……小虎」
「司さんだって、そんな豹牙先輩のことが大好きですよ」
「……っ」
豹牙先輩と俺の共通点、それは弟であるということ。俺が玲央に暴力を奮われ、冷たくされていたとき悲しかったように、豹牙先輩だって司さんに冷たくされれば悲しいはずなのだ。それをきっと、他の誰より司さんは知っているはずなのだ。
「だから豹牙先輩、俺、司さんに会ってきます」
「は?」
「色々と思うことはありますが、個人的にちょっと言ってやりたいことがありまして。だから、行ってきます」
「ばっ、おま……っ」
再び立ち上がろうとする彼の肩を、倍の力で抑え込む。そんな俺の手に触れた豹牙先輩の手は、いつもよりちょっとだけ頼りない。
「ダメと言いました。もし俺を止めたいのであれば、まずはこのお粥を食べてください」
「……」
「まぁ、とはいえ食べ終わるのを待つほど、俺は優しくなんてありませんけど」
「っ!?」
驚く豹牙先輩に微笑み、大人しくこちらを見ていた仙堂さんに目配せする。なにか言いたげな彼だが、俺の意図を汲みとってくれたのか、代わりに豹牙先輩の肩を抑えつけた。
「別に食べずに捨てても構いません。新山さんや仙堂さんにあげても構いません。俺に言わなきゃバレませんからね。先輩の気が済むのなら、どうとでもしてください。じゃあ、行ってきます」
「こと……っ」
なにか言われるその前に、俺はリビングの扉を閉めた。その場で一度深呼吸をして、事前に用意していたお粥を持って隣へ赴く。インターホンを鳴らして数秒後、顔を見せたのは意外にも巴さんだった。
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