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バイトを終えて帰宅するなり、俺はずっと我慢していたニヤケ顔をこれでもかと浮かべていた。
だってアレは卑怯だろ。どう考えたって卑怯だろ。

確かに兄貴面をかませと言った。世話をしろと言った。そして玲央はそれに応えてくれもした。
でも今日のあれは……今までのなにかを超えるものであることだけは分かる。
これまで以上のなにかを、玲央は俺に与えてくれたのだ。


「……〜〜っ」


ニヤける顔に両手をぎゅーっと押し付ける。
ダメだ、止まんない。無理だ、超ニヤける。

どうしよう、どうしよ俺もうホント……っ。


「……すっげぇ、すきだ……っ」

――ピンポーン。

「ぎゃあっ!?」


などと一人で浮かれていると、真後ろの玄関扉の向こうから誰かがインターホンを押したらしい。
ついビクッと跳ねると、後頭部が思いっきり扉にぶつかった。だ、ださいぞ俺……。

気を持ち直して扉を開けると、向こう側の景色に思わず絶句。


「あれ?」

「……」


玄関扉を開けるとそこには、なぜか外人がいたのである。
本物の金髪に青い瞳。キラキラと光り輝くその姿は王子様というよりも可愛らしい顔をしたお姫様だ。


「君だれ? ここレオの家だよね?」

「え、あ、はい。ここは玲央の家です」

「だよね。あっ、そういうことか。ダメだよー? レオはしつこくされると嫌がるからね。ほらさっさと合鍵渡してどっかに消えてよブサイク」


……はい?
なんだこの人。顔はめちゃくちゃ可愛いのに(おまけに日本語も流暢だけど)口悪すぎだろ。
なんだかちょっとムッとして、気持ち睨むと相手の顔から感情が消えた。


「なにその顔。レオの一番だって勘違いしてるの? うわー、ないよそれ。君みたいなブサイクに付き合ってあげてるだけさ。たまにはジャンクフードも食べたくなる気持ちも分かるけどね、レオのそれは気まぐれだ。分かったらほら、消えて」

「自己紹介が遅れました。俺、朝日向小虎と言います。ぜんっぜん似てないけど朝日向玲央の、正真正銘、弟です」

「…………へ?」


呆気にとられる外人に内心ガッツポーズ。




 


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