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「小虎、今のお前に言って、ちゃんと理解してんのか分かんねぇけどよ、でも何度だって教えてやるから、今から俺が言うことをしっかり聞け」

「うん……」


笑ったはずのお兄ちゃんの目が真っ直ぐ俺を見つめている。
けれど言いながら触れてくる手の優しさは、どこまでも温かい。


「……お前は覚えてねぇみてぇだけど、俺らが小さい頃からクソッたれ……親父は、おふくろを殴っていた。いっつも俺らの前じゃ笑ってるおふくろがよ、俺らに聞かせまいと声殺して泣いてんだよ。
そんときは多分、まだ俺はお前の兄貴としてまともだったんだろうけど、そんなおふくろの姿を見て、親父が悪なんだって認識した。
だから俺は親父が嫌いだったし、外面ばっかいいとこも、家じゃまるっきり別人になるとこも嫌いだった。
なのにお前はそんな親父に懐いてよ、お前がいるときだけは親父もおふくろも、家族みたいに笑ってんだよな。

親父は気づいてたんだろうな。俺が嫌ってて、小虎が懐いてること。だから親父は俺の前じゃ笑いもしなかったし、おふくろの顔色も暗かった。

多分、そんときにはもう、俺はまともじゃなかったんだろうよ。いつからか、親父とお前の両方が嫌いだった。
ついてくんなっつっても必ず後ろにいて、ヘラヘラ笑いやがって、親父の外面みたいに俺に媚売ってくるお前が大っ嫌いだった」

「……にい、ちゃ」


口を開こうとする。けれどお兄ちゃんが俺の口に人差し指を押し付けてきた。


「今なら分かる。お前にそんなつもりはなかったってな。でもそんときの俺もお前もまだガキで、自分の感情でしか測れなかったんだ。
なにが悪いとか、そうじゃないって言葉も全部、自分が一度決めたことしか受け入れなかった」




 


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