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*玲央side**


「……幼児退行、だね。幼児退行した小虎くんは泣き叫んで何度も何度もお兄ちゃんに助けを求めていたよ。かと思えば体を丸めてごめんなさい、ごめんなさいと謝ってもいた……置いていかないで、ともね」

「……っ」

「そんな小虎くんに真摯に接した成果なのか、小虎くんは僕をお兄ちゃんと呼んで慕ってくれるようになった。そして小虎くんが君とお母様の二人と離ればなれになり、お父様と過ごす惨たらしい生活を打ち明けてくれたのも、ちょうどそのときだった」


惨たらしい生活。分かり切っていたはずの現実に目の前が真っ暗になるみたいに動揺を隠せない。
男は物悲しい視線を小虎に向けていた。つられるようにして俺も小虎へ視線を向ける。
見た目に反する幼児退行した中身は、今どんな風に俺を見ているのだろうか。


「……お酒のせいなのか、それとも元々そういう性格なのか僕には分からないけれど、小虎くんが教えてくれた生活は……およそ人間のそれじゃない。
蹴る、殴るは当然のこと。外傷は残っていなかったけれど刃物で切り付けられたこともあるらしい。
大声で怒鳴るようなことはしなかったけれど、徹底的な人格否定。お前が悪いのだという精神的暴力。
中学校には通えていたそうだけど、食事はまともに取らせてもらえず、当時の平均体重をかなり下回るほど痩せていた。
休日は……首輪をつけられ、犬のような扱いをされて……なにより悲惨なのは……」


止めろ。それ以上聞きたくない。次の言葉を聞きたくない。
頭の隅で叫ぶ自分を押し殺し、強く、強く拳を握る。


「小虎くんは、躾と称され……父親の気分次第で、体に熱湯をかけられていたんだ。特に背中は本当にひどくて……発見当時、彼の背中は皮膚が爛れて、肉が見えるほど損傷していた」


せり上がる言葉を飲み込んだはずなのに、口からは堪えきれずに息が漏れた。




 


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