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朝、目を覚ますとお兄ちゃんがいなかった。
寂しくて膝を抱えると、扉が開いてそこからお兄ちゃんが現れた。


「やっと起きた「お兄ちゃんっ!」……」


ぎゅうう。しがみつく俺にため息をついたお兄ちゃんは、俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でてから抱き上げた。
すごく高くて嬉しくて、お兄ちゃんにもっとくっつこうとすると、すぐ下ろされる。


「んな顔すんな。飯食え」

「……はぁい」


ぶすーっとしながらテーブルに並んだ目玉焼きを食べる。


「お兄ちゃん、これしょっぱいよ?」

「あぁ? 文句言うなら食わせねぇぞ」

「やだ!」

「じゃあ食え」

「うー……」


すごくしょっぱかったけれど、なんとか食べ終えると着替えて来いと言われた。
でもお洋服の場所が分からずキョロキョロしていると、洗い物を終えたお兄ちゃんが俺の手を引きながら部屋に連れていく。適当に出されたお洋服に無事着替え終わると、どこかに電話していたお兄ちゃんが出かけるぞ、と言った。

お外に出るとタクシーが止まっており、そこに乗れと言うお兄ちゃんの言葉に従う。
お兄ちゃんがおじさんになにかを告げると、タクシーは動き出した。

しばらく走りつづけたタクシーは、大きな病院の前に止まる。
先に降ろされた俺はキョロキョロ辺りを見回していたが、すぐやって来たお兄ちゃんのあとを追って歩き出す。

色んな人がお兄ちゃんを見て驚いてたり、顔を真っ赤にしていたりしたけれど、お兄ちゃんはそんなもの気にしてないみたいに歩いていた。たまに俺のほうに振り返り、居るかどうか確認してるみたいなのが、すごく嬉しい。


「朝日向小虎さーん、どうぞー」

「おら、行くぞ」


ソファーの並んだ場所でしばらく待っていると、お兄ちゃんが立ち上がる。
お兄ちゃんのあとをついていくと、そこには――、


「拓美お兄ちゃん!」


俺の大好きな拓美お兄ちゃんがいた。




 


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