「に……ちゃ……」
「あ?」
ふわりふわりと体が宙に浮いてるみたい。
とっても暖かくて良い匂いがする。
俺は暖かさを求めて匂いの元に抱き着いた。
するとなにかが頭を優しく撫でてくれた。
「……んふふ、にーちゃ……」
温かいなぁ。良い匂いだなぁ。
お兄ちゃんに抱き着いたら、こんな感じがするのかな?
ぐりぐりと頭を押し付ける。もっともっと、いっぱいくっつきたい。
「……くすぐってぇよ、馬鹿トラ」
「……にーひゃ?」
あれ? 幻聴かな?
お兄ちゃんの声がする。
不思議に思って目を開けると、そこには髪の色が金色になったお兄ちゃんがいた。
それにお兄ちゃん、大きくなってる。
「おにいひゃん、きゃみゅのけキラキラだよ?」
「は?」
「キラキラ!」
「……おい、寝ぼけてんのか酔っ払ってんのか、どっちだよお前」
ため息をつくお兄ちゃんに首を傾げようとしたけれど、頭の下には柔らかいものがあって動けなかった。
よくよく見ると、俺はお兄ちゃんにくっつきながら寝てしまったらしい。
「えへへ。きょうはおにいひゃん、おこりゃないあ」
「あ?」
「いっひょにねりゅと、おにいひゃんおこりゅもん」
「……」
でも止めろって言うけど、殴るけど、お兄ちゃんが起きてるときに忍び込んでも追い出されなかったから、俺はお兄ちゃんのお布団で一緒に寝たいんだ。
しばらくじっと俺を見つめていたお兄ちゃんは、恐る恐る口を開いた。
「……お前、なんでいっつも付いてくんだよ」
「? だっておにいひゃん、ないちゃあでひょ?」
「はぁ? 泣かねぇよ」
「うそはめぇっておかあしゃんゆってた。おにいひゃんおれがみえなくなりゅとないちゃあでひょ?」
「……そんな風に見えてたのかよ、俺は」
また大きなため息をついたお兄ちゃんは、こちらに向けていた体をごろんと横に倒した。
そしたら少し離れてしまい、俺はいそいそとお兄ちゃんに寄っていく。ぎゅううとしがみついても、お兄ちゃんは怒らない。
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