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ある日の江藤家 - 2



「司、朝食だ」

「んー……」


俺の言葉に曖昧な返事を寄こす司に視線を向けると、どこぞの政治家の賄賂問題の記事を食い入るように見つめている。
その政治家、このあいだ駅前で演説してなかったか?


「司」


一向に朝食を取ろうとしない司の口元に、作ったガーリックトーストを運んでやる。
すると司は新聞からは目を離さずに口を開け、俺のペースで咀嚼する。
まるで親鳥のようだと笑いながら、結局はデザートまで俺が世話をするハメに。

自分もさっさと朝食を済ませ、学ランに着替え終わった頃にはさすがに新聞も読み終えていたが、今度は司自慢の6面モニタを眺めていた。
一つ一つ違う情報が表示されているというのに、司にはそれらを同時に処理できるだけの脳がある。我が兄ながら末恐ろしいことだ。


「じゃあ学校行ってくる」

「豹牙」


仕事の邪魔はしたくないので、さっさと学校へ行こうとバイクの鍵を持つと、モニタから目を離さずに司が俺を呼んだ。


「いつもの交差点は避けてね」

「……あぁ、いってきます」

「いってらっしゃーい」


バタン。扉の閉じる音を背に、肩を竦めてエレベーターへ向かった。

司に言われたとおり、俺は普段通学用に通る道を避けて学校へ向かった。
どうせここで学ぶものなどなにもないのだが、高校だけは卒業しときなよ、という司の言葉があるので通っている。
雄樹に譲った調理室ではなく、新たに場所取りで勝ち取ったコンピューター室へ行くと、すでに友人たちがダベっていた。


「おー、豹牙ー、無事だったん?」

「ん?」

「お前いっつも通る交差点、事故あったってさ。三年の先輩らが言ってたよー」

「ふーん? まぁ、日ごろの行いが良いからじゃね?」

「はぁ? お前の行いのどこが良いんだっつーの」


ゲラゲラ。笑う友人たちには悪いが、まぁそんなことだろうと思ってたわ。




 


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