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ある日の朝日向家 - 2



背中にはソファーの背もたれ、前には静かに寝入る玲央。
どうしてこんな窮屈な状態になったのか、考えてみても答えは出ない。
唯一の救いは、玲央が俺の胸に顔を埋める形となっているので、俺の頭が玲央よりも高い位置にあるということだ。
おかげで呼吸は楽なのである。――本当に、気休め程度の救いだが。


「……」


すぅ、すぅ。薄く開いた玲央の唇から漏れる寝息が近い。当たり前のことなのに、妙にくすぐったかった。
目の前にある金の髪を見つめる。見た限りでは枝毛一本見つからない。

本当は起きているんじゃないだろうか。そう疑ってしまうほど、腰に回った玲央の腕ははがれる気配がなかった。
時折、頭をすりつけてくるような動作をされれば、相手が玲央だと分かっていてもドキリとする。

いつか彼女ができたとき、こんなことすんのかなぁ……。
想像もできない恋人の姿を思い浮かべても、それは無用な妄想だった。
もし、万が一にでも俺に彼女ができたとしよう。けれど俺はバイトを優先するし、雄樹たちと遊ぶことを優先するだろう。
なにより……今はまだ、玲央と過ごせる家族の時間が一番大切なのだ。

いつのまにかニヤけていた自分の口元に呆れながら、彼女なんて夢はまだ当分先だなと一人ごちた。


「……んっ」


そんなとき、それまで静かに寝入っていた玲央がついに目覚めたのである。
寝起きのせいかまぶたは重そうで、水分を多く含んだ目はとろけたように甘い。
――なんだ、この色気は……っ!


「おはよう、起きた?」

「…………あー……」


俺の胸から顔を上げた玲央は、しばらく呆然とこちらを見つめていたが、苦笑しながら声をかけると、その顔はすぐに全てを理解したように歪んだ。




 


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