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俺の頭は人より若干、いや、かなりテンポの遅れた動作をしている。
事が起こって終わったあとにやっと実感するくらいのテンポの遅れがある。

それはひどく恐ろしいことだ。
終わったあとでは全てが遅い。そう、遅いんだ。

だからいつも後悔して、歯を食いしばって、でも自分の知人を理由に自分自身を守っている。
逃げ場所を作っている。慰めを期待している。甘えることを望んでいる。ただ盲目に、家族像を追っている。

家族とはこうあるべきだ。友達とはこうあるべきだ。
そんなどこで仕入れたかも分からない知識を振りかざし、それを盾に正論にもなれないそれを振り回す。

俺は、そうやって生きてきた。

なのに、そんな俺に周りはいつも笑ってくれた。優しくしてくれた。頭を撫でて、抱きしめてくれる。
俺がそんな彼らになにを返せただろう? いいやなにも、返せちゃいねぇ。


「……くっ」


住宅街の塀に手をつき、アスファルトの上に膝をつく。
それでも今の俺には、強い日差しをぶつける太陽よりも確かな思いがある。

ぐっと力を込めて立ち上がる。しゃんとしろ。男だろ。


――だから俺は、そんな周りに劣らない人間になりたいと、そう思った。

玲央のことを知れば知るほど、俺は被害者である意識が和らいでいく。
もともとその意識はゼロにも近いが、暴力を奮われていた、という確かな過去が俺の逃げ場所であることもまた、事実だ。

だけどそれを理由に優しくされるのは癪だ。それを理由に同情されるのも癪だ。
そんなことを頭の隅でつつきながら、俺は周りのそうではない優しさに触れてきた。


なぁ、玲央。俺、分かんなくなったんだ。
家族って、兄弟って、なんなんだろうな。なぁ、分かんねぇよ。

でもさ、家の外で辛いことがあっても、家に帰ってくれば安心するような、そんなありふれたものこそが、家族なんじゃねぇかな。

それって家じゃなくても、俺だったらカシストとか、玲央だったらデスリカとか、そういう場所でも代わるわけだろう?
ならさ、家族ってのはきっと――格好つける必要のない場所、なんじゃねぇのかな?

ボロボロんなっても、めちゃくちゃんなっても、辛くて、生きるのが辛いって泣いても、今日は幸せだったって笑っても、一人は寂しいって愚痴っても、それを黙って聞いてくれるような、そんな場所こそが家族なんじゃねぇのかな?
なぁ、どうなんだろう?

でも俺、そんな支えになってくれるみんなに、ただ寄り添って甘い蜜吸って、情けない夢を見ていたいわけじゃない。
俺も支えになりたいんだ。そうしてくれるみんなの、玲央の支えになりたいんだ。

俺じゃ役に立たないかもしれない。けど、なにも言わなくてもただ側にいて、安心できるような支えになりたいんだ。

だから、その代わりってわけじゃないけど、俺のことも支えて欲しい。
辛いことや悲しいことがあったとき、支えて欲しい。でもな、ただ支えられるのは嫌なんだ。

支えあっていたいんだ。

だから甘えるために体だって張るし、甘やかすためにうんと辛抱もしてやる。
だから、だからな、玲央。

帰る場所があるんだって、俺に教えてくれ。




 


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