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俺は立ち上がるために力を入れた。だけど当然、座りっぱなしだった体が言うことを聞くはずもなく、すぐに地面へと倒れてしまう。
頬が擦れた気もするし、腕もガラス破片で切れたかもしれない。それでも地面に手をつき、必死に立ち上がる。

ずっと俺を捕えていた鉄骨を支えに立ち上がれば、情けないことに足が震えている。
当然だ。物だってろくに食べていないし、喉だって乾いたままだったんだ。

でも、足を動かせばなんとか歩ける。玲央が少し食べさせてくれて、飲ませてくれたからだ。

大丈夫、俺はちゃんと、自分の足で帰る。


「……っ」


少し戻ってきた感覚が切れない内に外へ出た。
昼頃なんだろうか、太陽がさんさんとその日差しを浴びせてくる。


「……よしっ」


ざりっ、ざっ、ざり、ざり。
明らかに正常ではない動きを、どこか別の場所で見れることができたら、きっと俺は笑ってしまうだろう。
それくらい情けない足取りでも、俺は帰るんだ。帰る場所がある、帰りを待つ人がいる。


きっと玲央は分かってくれたんだろう。
俺が助けを求めた本当の意味が、分かったんだろう。

家族ってものをただ盲信的に追っていたが、それが一体どんなものかよく分からないことを最近、俺は気づかされた。
よくよく考えればそれはただの肩書なのかもしれないし、血の関係をあらわすだけの表札のようなものなのかもしれない。
だから、必死に追い続けた家族、兄弟像というものがひどく曖昧で、ひどくおぼろげであることが途端に怖くなったのだ。

そんな曖昧なものを振りかざし、弟面をかます自分自身に得体の知れなさを感じた。



 


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