「そうなりゃ遅かれ早かれ、お前がこうして俺のせいで巻き込まれるのは目に見えていた。だから、ちょうどいい機会だと思ったんだよ」
「……身をもって、知れってこと?」
「あぁ、そうだ」
グルグル。また思考が回って巡る。
それでも嫌な感じにならないのは、きっと。
「小虎」
「……え?」
「今の内だぜ、不良辞めろって言うなら、今の内だ」
「……」
――ゾッとした。
この人は、こうなると分かっていて、その中で俺がどうなるかも予想して、その全てを分かっていながらなお、それを実行した。
だけどその背景には頑なに筋を通した思いがあり、それは他の誰でもない――自分と、俺の為なんだ。
俺が兄貴面をかませといったあの日から、もしかしたら玲央は悩んでいたのかもしれない。
いまさらどう接すればいいのかも、俺にどう接されても困るだろうし、俺は俺で家族ってもんに目が眩んで一人で突っ走る。
きっと俺が思う以上に、俺の目はキラキラと輝きながら玲央を見ていたのだろう。お前は俺の、兄貴だろう、と。
だけど俺と玲央には五年の余白があって、暴力という時間もあって、正直、並大抵のことで済まされる問題ではない。そんなものがあいだにある。
なのに俺が綺麗ごとを盾に偽善的なことを言うから、玲央は余計に腹が立ったのだろう。
五年という俺の知らない時間で変わった玲央の、兄の姿はそんなものではない、と。
「……」
「……」
だから、玲央はその全てが分かるように、わざと俺を巻き込んだ。
そして巻き込んだことを悪と分かっているからこそ、今俺に言っている。
俺が不良を辞めろと言ったら、辞める覚悟があるのだと。
「……」
「……」
そして多分、本当に不良を辞めたなら、今度こそ俺のいう兄貴面をかます気なんだ。
「……や、」
なら、答えは決まってる。
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