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正義という言葉を辞書で引くと、正しい意義。また、正しい解釈とでる。
正しいという言葉を辞書で引くと、道理にかなっている。事実に合っている。正確である。道徳・法律・作法などにかなっている。規範や規準に対して乱れたところがない、とでる。

――形や向きがまっすぐである。とも、でる。

だけど実際、正義を振りかざす人間はごまんといても、その中に本当の、世で言う正しい正義というものはなく、人はみな、いつだって悪と戦っているのだ。

そんなことをいつか、テレビで見た。


――ハッ。として意識がどこかから戻る。
重い瞼を開けてみれば、俺の足がそこにあり、背中に冷たいなにかがある。手を動かそうとしても動かない。
辺りを見回せば、いつぞや見たような寂れた廃屋の中らしい。
うしろを見る。錆が剥がれた鉄骨があった。どうやらそれに両手をロープで縛られているらしい。


「……」


いつか来るとは、なんとなく思っていた。
匡子さんが言っていた巻き込まれるってやつだ。
そんなのは実際、カシストで不良たちを見ていて分かってはいたのだ。

だけどまさか……相手が志狼とは。


「……はぁ」


どんな心情から漏れたのか自分でも分からない。
それでも頭を横に振って、顔を上げた。

とりあえず、今は何日で、何時だ?
恐らくあのシュークリームに睡眠薬かなにか入っていたのだろう。それで、あの日から何日、または何時間経った?

そんなことを思惑していれば、おもむろに足音が聞こえた。
どうやら横のほうらしい。そちらに顔を向ければ、煙草をくわえた志狼と、そのうしろに数人の不良たち。
無意識に睨んでしまえば、目が合った志狼が笑った。


「おはよう、気分はどう?」

「……さいてー」

「うん、それは良かった」


いつもと同じように、志狼は笑う。




 


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