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「……なぁ、ちょっと長くなるが、聞いてくれ」

「え? あ、はい」


仁さんが先ほどまでの柔らかな表情を消し、突然そう言うものだから少しだけ身構える。


「……司がよ、お袋さん刺されたとき、ひっでぇ顔しててさ。自殺でもするんじゃねぇかって思ったんだよな。
だけどアイツがしたのはハッキングで、しかも相手が警察なんてそりゃ捕まるに決まってる。
案の定捕まったやつがすぐ帰ってきたときは、あぁ、こりゃなにかある……そう思った」

「……はい」


カラン。ふたたび仁さんのグラスで氷が音を立てた。


「情報屋……なんてはじめたとき、自分の予感が当たったことをこれほど憎んだことはねぇ。
それからアイツは得意なパソコンにかじりついて、相手が不良だろうがヤクザだろうが情報を売った。そして売った情報と相手を警察に密告した。

……馬鹿だよなぁ、アイツ。それを当時ボロボロになった豹牙のせいにしてよ、お前のためにやってるんだって、ちいせぇ豹牙にプレッシャーかけて……マジ、馬鹿だよな。

けど俺も情けねぇよ。そんな司を殴って責めることはできても、見捨てることはできなかった。アイツがチーム作るっつったとき、すぐ頷いた」


ソファーに背を預け、仁さんが笑う。


「でもな、俺も自分が可愛かった。アイツがブラックマリアに見立てて作った理不尽なゲームに参加して、そのくせボロボロになった不良どもに手を差し伸べた。俺は司とは違って優しいと、そう思われたかったのかなんのなのか、本当、くっだらねぇ」

「……」

「頭を下げたよ、司に。負けた不良どもが社会に戻れるようにって、職につけるようにって、後押しして欲しいってよ。司はなにも言わずに、それこそボクサーやらプロレスやら、そういう格闘技の世界や体力使う仕事先なんかを紹介してくれた」


仁さんが目を伏せる。ゆっくり開いた目は、天井を見た。


「そうやって司に頭下げて、不良どもに礼言われて、俺は思ったね。間違ってなかったと、俺がしてきたことはなにも間違ってなかったと……そう思ってでもしなきゃ、自分で自分を殺すとこだった」

「……」

「そうしてブラックマリアが二代目にうつって、司がこのビル買って、ここを俺に預けた。ここはブラックマリアの溜まり場になった。二代目からすぐ三代目に移ったとき、そんなときに雄樹があらわれた」


フッ、微笑む仁さんがグラスの酒をあおる。




 


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