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「それからのブラックマリアは俺の意志とは関係なく意味ができあがった。総長は不良たちの前に立ちふさがる壁、副総長は壁にぶつかった不良たちを慰める馬鹿、そしてそんな壁と馬鹿とゲームを見守る審判。スペードのクイーン、キング、エース……それがブラックマリアだよ、小虎くん」

「……」


俺は震えていた。情けないことに、震えていた。
目の前で必死に生きているこの人を支えてやるだけの力はない。それでも、手を伸ばして背中を撫でる。

フッと司さんが笑った気がした。


「今のブラックマリアの罰点は玲央、隆二、豹牙の三人。ねぇ、小虎くん、玲央は喧嘩に明け暮れていた。だから都合が良かった。人を殴ることになんの躊躇いも疑問もない。だから俺はアイツをブラックマリアにした」

「……」

「憎い? 不良たちを統制するために君のお兄ちゃんを利用する俺は、憎い?」

「……」


顔を上げた司さんが苦笑を浮かべている。
今にも泣きそうなほど、苦しい目だ。

あぁ、なんでだろう。俺、こんなにも。


「憎いわけ、ないでしょ。ねぇ司さん、アンタ勘違いしてるよ」

「……へぇ、どんな?」


こんなにも今、必死に満たされていくんだ。だから――。


「兄貴が総長になったのは兄貴が選んだからだ。そうじゃないなら責任だ。俺の兄貴はな、自分の責任から逃げるようなことはしねぇ」

「…………はっ」


はははっ! 司さんが腹を抱えて笑った。
俺はその姿に安堵の息を吐く。


「あー、おっかしー……。ねぇ、じゃあ聞かせてよ。君を殴りつづけた責任は?」

「それよりさぁ、ちょっと重い。退いて」

「あぁ、ごめんごめん」


「よっと」司さんがやっと俺の上から退いた。
俺は渡されていつのまにか消えていた缶ビールを探す。司さんに声をかけられ、新しい缶ビールを出した彼にそれを投げられた。

プシュッ。それを開ければ空気の抜ける音がする。




 


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