それから俺はカシストに戻るも、事が解決するまで見届けろと仁さんに言われたのでデスリカに向かった。
いつも以上に爆音を鳴らした店内では、色とりどりの髪をした不良たちが各自好きなように遊んでいる。
ダンスフロアにはいない姿を追って、俺は螺旋階段を上がった。二階についた瞬間、気絶していたはずの志狼の体が、ふわりと床に落とされる。……蹴ったな、兄貴のやつ。
「おら、さっさと吐けよ」
「……チッ」
もう気がついたのか、丈夫な志狼の体に感心しながら、そっとその横に近づく。
「志狼」
「……小虎?」
「怪我、だいじょう……ぶなわけ、ねーか」
「……小虎、ブラックマリアだったの?」
「はぁ? 俺のどこが不良なんだよ」
目を丸くする志狼の横にしゃがみ込む。ついでに新しく持ってきたタオルで銀の髪や綺麗な顔を拭いてやれば、志狼はどこかくすぐったそうに身をよじっていた。
「ったく、お前が喧嘩してた相手、俺の兄貴なんだよ」
「……は?」
「だから、朝日向玲央は俺の兄貴なんだってば」
「……」
嘘だろ、そう呟いた志狼の声に苦笑を浮かべる。まぁ、似てないからなぁ、俺ら。
血を拭き終えれば、痛々しい痣ができた綺麗な顔があらわになる。当分残るだろうそれが、兄貴の強さを物語っていた。
「そっか……じゃあ俺、悪いことしたね」
「……いや、なにがあったか知らねぇし……」
どこかすっきりとした表情が綺麗な顔に浮かび上がる。それでも痣となったそこが痛いのだろう、眉がピクリと動いていた。
片手で起き上がった志狼が兄貴の前に立ちふさがる。かと思えば、その頭を下げた。
「ごめんなさい、小虎の兄貴とは知らずに喧嘩売りました」
「……はぁ?」
そう言って、ふたたび上げた顔には迷いがない。
「でも先に喧嘩を売ってきたのはブラックマリアの連中だから、そこは譲らない」
「あぁ?」
なのにそうつづけるから、兄貴の顔が不機嫌に歪む。あぁ、もう。
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