「よしよし、安心しろってば。俺の最高のダチはお前だけだ」
「……そんな言葉に尻尾を振るとか、思わないでよねー」
いや、尻尾振ってんじゃねーか。見えない尻尾がブンブンしてんのが見えるぞ、俺には。
オーガズムを作り終えた仁さんがそんな俺たちになにも言わず、志狼の前にそれを置く。
「てめぇ銀狼(ぎんろう)だろ。隣県まで散歩でもしにきたのかよ?」
「違う違う。俺、今月越してきたんだよね。あっちでちょっとやりすぎて」
「……はぁ。ま、いいけどよ。俺の店に迷惑はかけるな」
「うん」
ぎ、ぎんろう?
なにやら不審な単語だったぞ。
俺と雄樹が目を丸くして仁さんと志狼を見ていれば、気づいた仁さんが俺たちの頭を撫でてきた。
「知らないだろうけどよ、こいつ、隣じゃ結構有名なんだよ」
「えー!? 俺知らないよー!?」
「雄樹は隣なんて気にしねぇだろうが」
「むーっ!」
説明をしてくれたはずなんだが、どうしてか俺にはイチャついてるようにしか見えない。
いやいやそれより、こっちじゃねぇよ問題は。
「……有名だったんだ、志狼」
「らしいね。俺、基本的にそういうのは気にしてないんだけど」
「……ま、いいけどさ」
「うん、小虎なら、そう言ってくれると思った」
頬を緩めて笑う姿に、こっちのほうが恥ずかしくなる。
出会ってまだ日も浅いとか、そんなレベルではない。なのに志狼は俺のことを信用ではないが、それに近いものを感じてくれている。
兄貴の弟ではない俺を見てくれている気がして、なんだか嬉しかった。
「小虎、顔赤い」
「うっ、うるせー。少し熱いだけだ」
「ははっ、うん、そうだね」
やはり大人びた志狼がそう言えば、嫉妬したのか雄樹が抱き着いてくる。
「それ、小虎の友達?」
「そうだよ! 俺はトラちゃんの最高のダチだ! お前なんか目じゃねぇからなっ!」
「うん、分かった」
「……」
あれ、意外といいやつかも……。とか呟いている雄樹は、やっぱりただのアホだと思う。
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