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素直に言えば、きっと笑うだろう。
一緒に出かけて、夢がまた一つ叶った俺が素直に言えば、兄貴はきっと笑う。
それでも言わせてくる兄貴が、悪い。


「……嫌じゃ、ねーから」

「……」

「兄貴とこうして普通にしてんの、嫌じゃねーから」

「……お前……」


どこか驚いたような表情で、鏡越しにこちらを見ている。
その視線から逃げるようにスポンジだけを見て、力を込めて背中を擦る。


「笑いたきゃ笑え。俺はな、アンタのことは許さねーけど、こうして兄弟らしいことすんのは別なんだ」

「……」

「このあいだだってな、一緒に出かけて本当に嬉しかったんだ……兄貴には、分かんないかもしれないけど」

「……はっ」


はははっ、突然笑い出した兄貴の声が浴室に反響する。
背中に泡をつけたまま腹を抱えて笑っている姿なんて、一体誰が想像できよう。見ている俺ですら信じられないというのに。
呆けてスポンジを握ったままでいれば、シャワーヘッドを投げつけられた。


「もういい、泡流せ」

「……」


まだ口元をニヤつかせたまま兄貴が言った。
ムッとしながら流してやれば、やつはなぜか上機嫌に「着替えて寝ろよ」とか言ってくるし。
なんか腹が立つんだが……ちょっと嬉しいとか思う自分がなぁ……。

あー、止め止め。宿題止め。

自室に篭って、以前ギャル男から貰った雑誌をめくってみる。
なんか見開きで載ってるんですけど、あの人。
恐らく専属モデルだろう人たちよりもかなり目立つ位置に立つ兄貴と隆二さんに、寒気なのかなんのか、不思議な思いを感じつつ、俺は泉ちゃん親子にもゾッとした。

この世には色んな人がいるとは言うが、本当だよなぁ。




 


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