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Greeting time gift
4 / 4 そして車へと戻った大輝と梨子。 「よし、次行くか」 「次はどこに行くの?」 「内緒」 「えー、また内緒なのー?」 不満げな梨子を横目で見ながら大輝は車を発進させた。 * * * 「か、可愛い……!」 しゃがみこみながらガラス張りの壁にピッタリと両手を当てて張り付き、キラキラした目で中を見ている梨子。そんな梨子を大輝は後ろから優しい眼差しで見守っていた。 「白クマの赤ちゃんだぁ。可愛い……あ、転んだ!」 梨子が夢中になっているのは白クマの赤ちゃん。このガラス張りの建物の中で人工保育されているのだ。 「大ちゃん大ちゃん!」 「ん?」 はしゃぐ梨子に手招きされ、大輝も梨子の小さな身体を後ろから抱き込むような体勢でしゃがんだ。端から見ればただのラブラブカップルだ。 「きゃー可愛い!ねぇ、大ちゃん見て見て!歩き方ヨタヨタしてる。なんであんなに全部が可愛いんだろう?あ、飼育員さんに甘えてる!」 小屋の中に現れた飼育員の元へヨタヨタと歩み寄った白クマは、飼育員の足元でじゃれながらゴロゴロと転がる。その姿は「遊んで遊んで」とおねだりしているようだ。 「梨子みたいだな」 「え、私?」 きょとんとしながら梨子は振り返って大輝の顔を見る。二人の身体はピッタリとくっついているので、お互いの顔は今にもくっついてしまいそうなほどの近さだ。大輝は微笑んで梨子の頭を撫でる。 「梨子みたいに甘えっ子で、可愛いから思わずかまってやりたくなるところがそっくり」 「そ、そんなことないもん!」 「そんなことあるんだよ。俺はさっきから白クマ見てはしゃいでる梨子を見て可愛いなと思って楽しんでたんだ」 「は、恥ずかしい……」 梨子は頬を染めながら両手で顔を押さえながら大輝から顔をそらして俯く。 「梨子は自慢の可愛い妹だからな」 「わ、私も!大ちゃんは自慢のお兄ちゃんだよ!」 俯いていた梨子が勢いよく顔を上げる。梨子はまだ赤い頬のままにっこり笑った。 「梨子が満足したなら次行くか」 「うん!」 二人は立ち上がり、手を繋いで歩きだした。 その後、大輝と梨子はパンダやカピバラ、最近生まれたライオンの赤ちゃんなどを見て回った。白クマの赤ちゃんの時のように、その可愛さにノックアウトされた梨子ははしゃぎっぱなしだったが大輝も始終微笑んでいた。 そしてすっかり日が落ちた頃、二人は帰りの車内にいた。 「んー楽しかった!」 「俺も楽しかったよ」 はしゃぐ可愛い梨子を見てるのが、と大輝は心の中で付け足した。 「でも良かったのかなぁ?大ちゃんのお誕生日なのに、私がぬいぐるみ買ってもらっちゃって……」 梨子の膝の上にいるのはフワフワの真っ白い毛を持った大きな白クマのぬいぐるみだ。グッズコーナーに立ち寄った際、梨子がこのぬいぐるみとしばらく見つめ合っているのに気付いた大輝はその様子があまりにも微笑ましすぎたため、我慢できなくなったのだ。 「梨子に持ってて欲しかったんだよ」 「ぜったい大切にする!それでね、今日から一緒に寝るの!」 ねー?と言いながら梨子はぎゅうっとぬいぐるみを抱きしめる。 「お前、梨子と一緒に寝れるなんて羨ましいな」 「えー?」 白クマの頭を撫でながら言った大輝の言葉に梨子はクスクス笑った。 「あ!じゃあね、今日大ちゃんのお部屋にお泊りしちゃおっかな!それでね、この子と三人で寝るの!ね、ダメ?」 いいでしょ?と上目遣いで懇願する梨子に大輝の頬も緩む。本当はこのまま帰宅して別れるつもりであったがこんなに可愛いお願いをされて断れるわけがない。 「そしたら一回梨子の家に帰って明日の準備してこないとな」 「うん!」 ぬいぐるみに「よかったねー」と語りかける梨子。大輝はハンドルを握りながら、一体この可愛いすぎる生き物はなんなのかと思った。 「あー、そうだ。色々と考えとかないとまずいかな」 「何を?」 ぽつり呟いた大輝に梨子は首を傾げる。 「言い訳」 「いいわけ?」 大輝は苦笑しながら答えたが、梨子は首を傾げたままだった。 梨子を一人占めして眠る言い訳。梨子を溺愛している弟があと四人もいる中で、梨子を連れて帰って大輝の部屋に泊めることをすんなり納得するとは思えなかったが。 「まぁ、なんとかなるか」 今は残り少ない二人だけの時間を満期しよう。 最高の時間を過ごすことができたのは、愛しい君が隣にいたから。 君からのプレゼントは、この先一生忘れることはないだろう。 Greeting time gift (2010/05/05-2010/06/06) |
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