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Greeting time gift
2 / 4 「梨子ちゃんはさ、大輝のどこが良かったの?」 「へ?」 突然話を振られて梨子は思わず間の抜けた声を出してしまった。 「羽柴さん。何言ってんですか」 「ねえ、梨子ちゃん」 咎める大輝を無視して羽柴は梨子をじっと見る。梨子はどうしようか迷った末、ぽつりぽつりと話し始めた。 「……あの、大ちゃんは、優しくて、いつもみんなのこと考えててすぐ自分のこと後回しにしちゃうから、たまには私が大ちゃんに何かしてあげたいと思っててもやっぱり甘えちゃって。だけど、たまには大ちゃんも甘えて欲しいなって思うんですけど……」 梨子が話すのを大輝と羽柴は黙って聞いていた。大輝の頬は心なしか赤く染まっている。 「それから、一緒にいるだけでなんかすっごく落ち着くし、大ちゃんのおおきな手で頭を撫でてもらったら、なんていうか、気持ちがフワフワして、あの、なんだか優しくなれるっていうか、その……」 「梨子、ストップ」 「え?」 大輝は右の手の平を梨子に向けてストップをかけた。きょとんとして梨子が大輝を見ると、大輝は左手で顔を覆いながら少し顔を背けている。 「大ちゃん?」 「もういいから。ちょっと待ってくれ……」 「ごちそうさま。俺はまた後でくるから」 「羽柴さん?」 羽柴は大輝の肩を軽く叩いてキッチンへと入っていった。 「大ちゃんどうしたの?」 「いや……その、嬉しくて」 「嬉しい?」 「最高のプレゼントだよ。ありがとう、梨子」 まさかこんなところで梨子の気持ちを聞けるだなんて思ってもみなかった。羽柴にまったくそのつもりはなかったのだろうが、大輝にしてみればナイスアシストだ。 「ありがとう、って私なんにもしてないよ?」 「梨子にはいっぱい貰ったよ。だからありがとうなんだ」 「うん?」 梨子から大輝が貰ったプレゼントは、お金では買えないとっても大事なもの。それは優しくて、温かくて、幸せになれる、とてもキラキラと輝いているもの。 「はい、大変お待たせいたしました」 再び現れた羽柴の両手には大きな白いプレート。大輝と梨子の目の前にそれぞれ静かに置く。 「試作品のハンバーグのパイ包み焼きプレートでございます」 羽柴が説明をするその隣から先ほど出迎えられた女性店員がライスのプレートをテーブルへと置いた。 「美味しそう。あ、でも試作品なんですか?」 「そう。今度若い女の子向けにランチセットを出そうと思ったんだけど、若い女の子がウチの店にいなくてさ。参考にならねぇの」 「オーナー、ここにいますよ。若い女の子」 女性店員が自分を指差しながら言った。 「俺の求める若い女の子は十代、二十代なんだよ。三十代半ばで女の子だなんて図々しいぞ」 羽柴はバッサリと切り捨てたが、ずっと二十代半ばだと思っていた女性店員が実は予想より年上らしいことに梨子は驚いた。 「うちの店員がこの店長以外男ばっかなもんで。だから協力してくれな、梨子ちゃん」 「……え、店長さんだったんですか?」 「申し遅れました。店長の榊です。よろしくね。どんな細かいことでもいいから意見聞かせてもらえると嬉しいんだけど」 「わ、わかりました」 女性店員はこの店の店長らしい。随分と若い店長だと梨子は思った。 「さて、冷めないうちに食ってくれや。また後で意見聞きに行くから。それにデートの邪魔しちゃ悪いしな」 「羽柴さん。一言余計です」 大輝に睨まれて肩をすくめた羽柴は何やら楽しそうにキッチンへ榊と戻って行った。 「すごい、ほんとに美味しそう」 メインプレートにはレタスなどのサラダ、パイ包み焼きハンバーグ、別の小さな容器に入ったプリン。もう一つのプレートには軽く味付けのされたライスが盛られている。 「ここの飯はどれ選んでも上手いよ」 「そうなんだぁ。よし、いただきまーす」 手を一度パチンと合わせてから梨子は両手にナイフとフォークを持ち、パイにナイフを入れるとサクッと気持ちの良い音がした。梨子は一口サイズにカットしたそれを口に入れた。 「お、おいしいー」 「そっか。連れてきて良かった」 幸せそうに料理を頬張る梨子に大輝は頬が自然と緩む。 「協力ってこういうことだったんだね」 「そう。親父経由で話が来たから梨子を連れて行こうと思って」 「連れてきてくれてありがとう。こんなに美味しいご飯食べられてすっごく幸せ!」 二人でニコニコと笑い合う。それから大輝と梨子はゆったり会話をしながら楽しいランチタイムを過ごした。 |
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