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10000hit記念祭
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必要最低限しか電気がついていない廊下を進み、三階に上がって図書室の前の廊下を歩いていると一人の女子生徒とすれ違った。 「あっ、さようなら」 「はい、サヨウナラ。もう陽落ちてっから気をつけて帰れよ」 「は、はい」 女子生徒は軽く会釈をして足早に去って行った。こんな時間まで勉強か?熱心だねぇ。なんて考えながら図書室の扉を開けた。 「もう閉館時間……って先生」 「よっ。まだ誰か残ってんの?」 「いえ、もう皆帰りました」 図書室内を見渡してみたが確かに誰もいないようだった。ウチの学校の図書室はあまり広くないから簡単にチェックができる。 「そっか。お前はまだ帰らねぇの?」 「この図書室便りの原稿完成したら帰ります。あともう少しだから」 「そうか……よっと」 「先生?!」 俺はカウンターを跨いで理沙子のいる内側へと入り込み、カウンターに背中を預けるように座り込んだ。椅子に座っているため上から見下ろす形になっている理沙子がキョトンと俺を見ている。 「ま、俺のことはお構いなく」 「どして?」 「なんでってそりゃ、理沙子と一緒にいたいからに決まってるじゃん」 「せ、せんせ……」 あーあ。顔赤くしちゃって。自分は昼間俺に好きって言ったくせに。 「照れてないで仕事しろよ。帰れねぇだろ」 「さ、先に帰っていいよ!」 「やだね。もう完全に陽落ちたのに理沙子を一人で帰せるわけないじゃん」 そこまで俺は薄情じゃねえって。っつーか本当は俺の家に連れて帰りてぇけど、それは我慢。 「待ってるから」 「……うん」 二人きりの図書室には理沙子がキーボードを叩く音だけが響く。あーやべ。なんか眠くなってきた。なんだか心地好くてうっかりまどろみかけた俺を現実へ引っ張り上げたのは扉が開く音だった。 「もう閉館時間なんですけど」 「え?」 椅子から立ち上がって理沙子が告げると、相手はちょっと驚いたようだ。カウンターに背中を預けている俺はドアの方が全く見えない。けど声で性別だけは判断できる。この声、男だな。 「何か借りたい本とかありました?」 「あ、いや、俺はちょっと人を探してて」 「そうですか。残念ですが、ここにはもう誰もいませんけど?」 「……そっすか、ありがとうございます。失礼します」 ドアが閉まる音がした。よし、出てったか。その後すぐに理沙子がカウンターを出て図書室の扉を一度開け閉めした直後、中から鍵を閉める音がした。 「俺、さっき扉の札閉館にしとけばよかったな」 「今したよ。ねぇ、さっきの人が探してるのって、先生じゃないよね?」 理沙子はまたカウンター内に戻ってまたキーボードを叩き始める。 「違うだろ、多分」 俺はそんなに図書室に来る方じゃねぇし、化学準備室にはまだ鞄が置いてあるから探すならそこで待ってる方が確実だからな。 「でも、お陰で目覚めたぜ」 「眠かったの?」 「ちょっと落ちかけてた」 「そっかぁ、はい終わり」 理沙子がパソコンの電源を落としてから、椅子をくるっと回してこっちを向いた。 「理沙子」 「ん?」 おいでおいでと手招きしてやると理沙子は椅子から下りて俺の目の前にしゃがんだ。 「つかまえた」 「わっ!」 理沙子の腕を掴んで引っ張ってやるといとも簡単に俺の胸に倒れこんできた。俺が膝を立てている足の間にすっぽりと収まった理沙子の小さな身体を抱きしめる。 「なぁー、早く卒業してくれよー」 「それは私の意思で早められるものじゃないです」 「それはよくわかってっけどさー」 チュッ 不意打ちで理沙子にキスしてやった。理沙子はビックリして固まってる。 「早くキス以上のことしたいだろ?」 キスも手出してることには変わりねぇけど、それ以上はまた話が変わってくるだろ。 「……ごめんね先生」 「は?」 ここ、謝るようなタイミングだったか? 「私が子供だから……」 あぁ、そういうことね。なんだよ。んなこと気にしてたのかよ。 「確かに年齢だけ見たら理沙子は子供だろうけど、俺にはそんなの関係ねぇよ。俺は理沙子が好きなの。そんだけ。理沙子は子供でも俺にとっては十分すぎるぐらい女で、俺はそんな理沙子にいつも欲情してんだぜ?」 「よっ、よく……!」 「もう我慢の毎日」 「あ、あの……」 「早く大人になってほしいとは思うけど、それは俺が色々と理沙子に手出しやすいからっていう理由だけだし、それを除けば別に何とも。だから理沙子は焦んないでそのままでいてくれていいから。で、今のままゆっくり大人になってくれりゃいいよ。気長に待ってるから」 「うん……」 理沙子と付き合う時に決めたんだ。焦らない慌てない急かさない。さっきはうっかり本音言っちまったけど。気をつけねぇと。 「っつーことで、もうしばらくはキス魔続けるんでよろしく」 「せんっ……」 この先が解禁されたらどうなんだろうな。うわぁ考えただけでやばい。ちょ、考えるな俺。我慢できなくなるだろーが。 とりあえずキスしすぎて唇腫れないように注意しねぇとな。 このまま大人になってく 「そろそろ帰ろうぜ。駐車場で待ってるから」 「うん」 「続きは車ん中で」 「まだするの?!」 (2010/05/17-2010/05/29)
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