|
10000hit記念祭
2/2
「ね、食べて?このだし巻き卵とか特に自信あるんだ」 箸を先輩に渡しながら、俺は自信作のだし巻き卵を指し示す。 「い、いただきます」 箸で二つに切り分けて理沙子先輩はゆっくりとそれを口に運んだ。俺はその様子を黙って見つめる。そして先輩は「おいしい」とぽつり呟いた。俺は安堵のため息を吐く。あー良かった。 「こんなに美味しい卵焼き初めて食べた」 「え、マジ?!そんなに美味しい?!」 「うん。びっくりするぐらい美味しい」 「じゃ、俺のも食べる?あとこのハンバーグも絶対美味しいから!」 俺は自分の弁当のだし巻きを理沙子先輩の弁当の上に乗せた。うわー俺超幸せ。 「ま、待って海くん!そんなに食べれないよ!」 「あ、ごめん。そうだよね!俺嬉しくてつい……」 「でも、卵だけはもらっちゃう。ありがとう」 「うん!」 先輩はニッコリ笑った。あーもう好きだ。大好きだ! それからおかずの材料とか作り方とか、他にも部活の話とかしながら至福の時間を過ごした。 「ごちそうさまでした」 「こっちこそありがとうございました」 「すっごい美味しかった。海くん、きっと良い旦那さんになるね!」 「……え?」 ちょ、旦那って。どういう意味?!理沙子先輩!一体どういうことですか?!できれば俺は理沙子先輩の旦那になりたいです! 「あ、その、ちがくて。……料理上手な人ってすごいなっていう意味で」 「俺はどうですか?」 「ど、どうって?」 「俺、理沙子先輩なら彼氏すっとばして旦那でも全然オッケーです」 俺は理沙子先輩との間合いを詰めて近づいた。 「海くん、からかわないでよ!」 「からかってなんかないっす。俺、本気で理沙子先輩が好きなんです。大好きです先輩」 「だ、だって……」 先輩は若干身体を後ろに引いた。今はっきり告白するつもりじゃなかったのにな。じっくり攻めるつもりだったのに。ま、仕方ないからいいか。 「っていうか、これまでもはっきり好きとは言わなかったけど俺散々アピールしてたじゃないですか」 「そ、それは……なんか懐かれてるなとは思ってたけど」 「俺が好きって気付いてなかったんすか?」 「こ、これっぽちも」 なんとなくそんな気はしてたけどマジかよ。周りは皆気付いてたぞ?理沙子先輩って鈍感さん?ま、そんな理沙子先輩も大好きだけどね。 「じゃあ、ようやく俺の気持ちに気付いたところでちゃんと考えてくれますか?」 「か、考えるって?」 「俺と付き合うかどうかってことっす」 「っ、付き合うって……」 あー、困ってるよ。ちょい攻めすぎ?俺ストレートすぎ?いや、でも相手は理沙子先輩だしな。変化球は一切通用しないことはさっき判明したし。全部直球でいいよな。 「別に今すぐ返事して欲しいとかじゃないですから。これからゆっくり俺を見て考えてもらえればいいです」 「……はい」 消え入るような声で返事しながら理沙子先輩はコクンと頷いた。 「確認のためにもう一回言います」 俺は一度深呼吸をしてから理沙子先輩の目をじっと見つめる。 「俺は理沙子先輩が大好きです。だから、絶対こっち向かせて見せます。絶対に」 理沙子先輩は両手で口元を覆って俯いてしまった。その顔は真っ赤で、耳も真っ赤。よしよし効いてるな。 「……ずるい」 「え?」 俯いたまま理沙子先輩は呟いた。軽く俯いたままチラッとこっちを見る。その顔やばいから。可愛いすぎるから。 「真剣な顔でそんなこと言われたら……嫌でも意識しちゃうじゃない」 俺は頬が緩むのを抑え切れなかった。 「それは良かった。狙い通りです。……覚悟してください、理沙子先輩」 そして放課後、俺は姉貴に一通のメールを送った。 『弁当作戦、成功』 意識しちゃってください 「とりあえず、今日一緒に帰りません?勿論二人っきりで」 「そっ、それ、は……」 「まぁ、ダメと言われても拉致するつもりなんで。楽しみに待ってて下さいね」 (2010/05/12-2010/05/24)
←* 2/2 #→
|
|