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10000hit記念祭
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「貴也と理沙子、何う歌うか決まった?」 「決まったよー。今入れるね」 理沙子が電モクを操作して曲をリクエスト。ピピピッと音が鳴って画面隅に映し出されるタイトルに一同が盛り上がる。 「何、理沙子がリイコ?」 「んにゃ、貴也がリイコ」 なんだよそれ!と仲間たちは笑った。 「俺のリイコに惚れても知らないぜ男ども!」 「むしろ理沙子のラップに惚れるかもな」 自信満々に言い放った貴也の顔が一瞬にして歪んだ。お前わかりやすすぎ。どんだけだよ。 「ちょ、理沙子!やっぱりパートチェンジしよう!」 「え?なんで?」 「俺ラップしたい!」 「やだ!友達の彼氏に『カッコイイ!』と言わしめた私のラップを披露したいの!」 今度はラップの奪い合いかよ。っつーか、理沙子に女パート歌わせる方が貴也にとってマイナスなんじゃないのかよ。 理沙子は可愛い。いつも明くて笑顔とかキラキラしてるし。さっぱりしてるから友達も多いみたいだし。他に理沙子が好きな奴もいるだろ。その理沙子がコテコテラブバラードの女パート歌わせたら、やばいんじゃないか? 「貴也、耳貸せ」 「ん?」 貴也に俺の思ったことをこっそり教えてやった。すると貴也は目を丸くして俺の顔を見た。ようやく状況理解したのか? 「それでお前はどっちを歌いたい?」 「決まってるだろ。理沙子!」 「なに?」 「やっぱりお前はラップな!」 そうそう。メロディーよりこっちのが安全策だろうが。この中に理沙子をどうこうしようとしてる奴なんていないとは思うけど。たぶんみんな貴也と理沙子のこと知ってるだろうし。 「任せて!そこのお嬢ちゃんたちのハートをわし掴みしちゃうからっ!」 「理沙子カッコイイ!」 女子たちの固まっている場所を指差した理沙子に女子が沸いた。理沙子、お前女のハートわし掴みしてどうすんだよ。まずは貴也をなんとかしろよ。 * * * 「明日もう化学返ってくるよな。俺、悲惨なんだけど」 帰り道、おれたちは明日返却されるだろう答案への不安をぶちまけながら駅まで歩いた。俺は化学得意だからそこまで悪くはないと思うけどな。 「俺、帰る前に廊下で中原先生に会ったから苦情言ったもん」 「苦情て。文句言う前に勉強しろよ」 「だって化学苦手なんだもんよー」 先生に苦情って、貴也馬鹿だろ。苦手ならさらに勉強しろって。 「答案用紙にポテチ落としてオマケにプラス三点とかしてくんないかな?」 「それ、CMの話でしょ!」 貴也のありえない願望に理沙子が大爆笑してる間に駅に到着。 「じゃあまた明日なー」 「バイバーイ!」 駅で仲間と別れる。徒歩組、電車組、バス組。俺と貴也と理沙子は徒歩組、のはずだったんだけど。 「じゃあ、俺もまた明日」 「なんで?雄大帰らねーの?」 「ちょっと寄るところがあるから。お前ら二人で先帰ってくれ」 「用事?俺ら付き合おうか?」 「うん。まだ時間あるし」 馬鹿野郎。気きかせてやってんだよ。気付けよこの鈍感二人組! 「いや、彼女のトコ行こうと思って」 っていうのは嘘だけど。そんなこと知らない二人は顔を赤くして急にキョドりだす。 「あっ、そ、そうなんだ」 「だったら邪魔しちゃ悪いよね。帰ろう貴也」 二人はそそくさと帰っていった。そうそう。おとなしく二人で帰れ。小さくなる二人の背中を黙って見送る。あの微妙な距離はなんだよ。せっかく気遣ってやったんだから手ぐらい繋いどけよ。 っつーか、どっちでもいいからさっさと告白して付き合えよ!見てるこっちがもどかしいんだよ。 好きなくせに馬鹿みたい (あーもう!) (なんで気付かないんだよ!) (2010/05/10-2010/05/20)
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