ドロップ | ナノ

帰りのHRが終わっても教室に居残るZ組の生徒にさっさと帰れよと促し、俺は自分の城と化した国語準備室に入る。机の上に置かれているのは名簿で、うっすらと引かれた線の上に書かれている名前を見て溜め息の代わりに煙草の煙を吐いた。




「苗字名前、」




学年でも成績がわりかし高く、けれど最近では授業中の居眠りが目立つ。他の教師からも指摘はされているみたいだが一向に改善はされていない。本人曰く「遅くまで勉強をしている」との一点張りで結局、こちら側は丸め込まれて今に至っている。

しかし、実際はそうではないことを俺は知っている。苗字のクラスの担当をしている坂本の話によれば、家庭環境が複雑らしい。本来は禁止されているアルバイトもしており、坂本は敢えて見て見ぬ振りをしているのだと言っていた。

とはいえ実際俺には関係のない話で、真面目に学校来て授業を受けてさえくれれば気にも留めない生徒。……いや、入学時から目を反らせない生徒だが、俺の考えは所詮、杞憂とやらだ。




「……さてと、帰るか」




灰皿に煙草を押し付けて白衣を脱いだ。その白衣を椅子の上に投げ置き、適当に机の上に転がるもんをカバンに入れたら、俺は準備室を出る。今日は給料日。坂本と飲みに行く約束をしている。

そして明日は休みだ、今夜は二日酔い覚悟で飲み、1週間のストレスを吐き出す。それが俺の金曜日。










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