ドロップ | ナノ


「ただいま」




そう言っても誰も居ない家。鞄を部屋に置いて、シャワーを浴びるため脱衣所に向かう。




「……早く行かなきゃ」




シャワーを浴びたあと、鏡の前に座り、丁寧にメイクを施していく。薄暗いところでも映えるように少し厚く、私じゃなくなるくらいにアイラインを引いて、仕上げにグロスを塗る。それからアイロンで髪を巻いて、スプレーで固める。

鏡を見ながら何度か瞬きをして、ジャラジャラとラインストーンが揺れ動くピアスを付けた。ブランドの箱を漁り、バック選ぶとそれにポーチや携帯、財布等を入れると肩に掛け家を出た。




早く行かないと。今日は同伴出勤だ。







……私は年齢を誤魔化してキャバクラでバイトしている。アルバイトが禁止である学校にバレたら良くて停学。いや、普通のバイトならいいかもしれないけれど、もしかしたら退学になってしまう。それでも手っ取り早く稼げるのはこれくらいしかない。





私の親は最低で最悪だ。莫大な借金残して父親は逃げた挙句、母親は素知らぬフリで遊び回り、男の家に入り浸りの生活を送っている。

え、悲惨?そんなことない。世の中にはもっと、辛い人だって居るんだから、私はまだマシなほう。

親のことだってもうどうでもいいと思っている。父はともかく、母は10代で私を産んでいる。遊びたい盛りに髪をひっ詰め、一応私を小学生までは育ててくれたのだから、なにも言えない。というか言う気力もない。





高2になってからキャバクラで働くようになってある程度の位置に立ち、給料も良い。ギリギリの生活を送っていても、借金は全然無くならない。勿論、母親は借金には関わらない。毎日来る借金取りにもいい加減うんざりで中学の頃から細々とアルバイトでほんの少しずつ返してはいたものの、利子がついている以上、プラスマイナス0。

お陰で学校に居る間は眠たくて仕方がないが、それ以上にいつ学校にバレるかビクビクしてる日々。……最低限高校は卒業したいと少なからず思っているからだ。




だけどこのバイトは辞められない。





仕方ないでしょ?

お金が必要なんだから。










100829

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