ピアスを開ければ運命が変わると聞いたことがある。 そして高2が終わろうとしている冬、ピアスを開けた。痛くはなかった。耳朶に穴が開くのに何も思わなくて、次の日、私はまた一つ、耳に穴を開けた。 これで人生が変われば嬉しいのだけどそう簡単に行かないのが現実。そう、現実が変わればいいのにと少なからず考えていた私は浅はかだ。 ――――― 「起きろ、苗字ー」 後頭部に強い衝撃を感じ、重たい瞼を上げ、そのまま様子を疑うと白衣が見えた。のそりと頭を上げて横に向けば、白髪(本人は銀髪だと連呼しているが正直どっちでもいい)の男が目に入る。 クスクスと笑い声に不快感を覚えながら此処は学校で授業中だということを思い出した。ああ、もう面倒。 「俺の授業で寝んなよー苗字。先生ショックじゃねェか」 嘘をつけ。いつもは自習にしてジャンプを読んでろくに授業をやっていないほうが生徒にとってはショックだ。こんな大人にはなりたくない。とは言っても今日は珍しく授業をやっている。流石にテスト前だからだろうか。 「……すみません」 一応こんな奴でも教師であるから、口答えはせずに謝って国語の教科書を開いた。先生はよろしいと一言告げて教卓に戻っていった。めんどくさい、そう思いながらパラパラと教科書をめくっていく。 勉強なんてしなくたってできる。……いや、それはちょっと大袈裟かもしれないけど、家ですれば問題ない。だけど寝る時間を惜しんでも励まなければならないのは勉学ではなくて勤労。 黒板の上に掛かっている時計を見て、これからの予定を頭の中で組む。そして適当に授業を聞きつつも肘を付いて恰も起きてますよとアピールをしながら寝る。結構上手くなったほうだと思う。 まだ4限。ああ、早く学校が終わればいいのに。 100828 |