隠していた俺が現れた。名前に触れる男。ただの客、それはわかっている。だけど熱くなる身体。吐きそうになる。 泣き腫らした瞼を閉じて眠る名前にごめんと呟いた。抱いて、しまった。破瓜の痕がシーツに残っているのが痛々しい。……非道なことをした俺が言えるものでもない。 雨の音が、俺の声を掻き消した。ごめんも、泣き声も。 「……最低だわ、俺」 手を出さまいという決意は脆く、感情を抑えられなかった。壁を壊してしまった俺はこれからも、こいつを傷付けてしまうかもしれない。……離れればいいのに、身体の相性だけは、何故か良く感じた。 こいつに幸せを与えてやろう。 ……それは出来なくなってしまった。 「……せ、んせ?」 「……名前、どうした?……痛むか?」 うっすら開かれた瞳は案の定赤くて、すぐに心配する俺に大丈夫だよと名前は言った。……わかりやすい嘘をつきやがって。 「……私なら、大丈夫……だから。……だから何処にも行かないで……」 子どものようにしがみつく名前を突き放すことは出来なかった。こんな俺を赦してくれるのか。 「ごめんな」 震える小さな身体を抱きしめて、何度も謝る。名前が紡ぐ大丈夫の言葉は自分の身体のことではなく、俺の心に向けての言葉だと気付いて胸が苦しくなった。 それも最初だけで、再び身体は重なりあった。お互いの温かさを埋めるように。 101115 |