vacillate between fear and love
6話

「好きだ」


思いがけず、数年前と同じ言葉をサスケから告げられて。


本当は、喜ばなければいけない筈なのに、だがその時胸に広がった感情は、痛みを伴う切なさだけだった。


昔の自分が望んでいた通りになったのに。


なのにそれでも、ナルトの気持ちはちっとも晴れなかった。


囁く彼の声は甘く、瞳に宿る光は真摯なものだ。


けれど、どんなに強く抱き締められても、腕の中にきつく閉じ込められても、応えるべき言葉が見つからない。


そうされれば、される程、拭い去れない不安だけが、脳裏を堂々巡りする。


サスケが優しいのも、大切にしてくれるのも、あるいは愛してくれているのも。


今だけ、一時だけの、ただの気紛れかもしれない。


実際に、サスケは昔、自分を置いて手の届かない所へ行ってしまったではないか。


彼を捕まえる為に伸ばした腕は結局空を掴んだだけに終わり、そして必死に彼を呼んだ声は、笑ってしまう程全くの無力だった。


サスケを失いたくないと……いくら自分がそう思っていても。


彼は、目の前から消えてしまったのだ。


昔のこととはいえ、今、この瞬間にだって感じている胸の苦しさは、本物なのだ。



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