vacillate between fear and love
4話
病室で目覚めた時には、一人だった。
サスケはいなかった。
彼は去り、自分は取り残されたのだ。
サスケを失ったのだから、己でも気が狂う程に取り乱すかと思っていたのに、現実には空虚な心を抱えて、それでも仲間の前では、いつも通りの自分を演じている自身がいた。
それは、もしかしたら感情の揺れが多すぎて、ちゃんとした形として吐き出す事が出来なかっただけなのかもしれない。
現実に受けたダメージは、あまりにも大きかった。
胸が、苦しかった。
痛みでどうにかなってしまいそうだった。
それぐらいに、好きだった。
容赦ない現実の中で、揺るぎないものは、それだけだった。
自分の中の、たった一つの「好き」。
一番大切なもの。
どうか、一人にしないでほしい。
彼への消せない思いを抱いてなお、これ以上孤独でいるのには、耐えられない。
ここに居てほしい。
たとえ、自分の望んでいた形ではなくても。
彼の「好き」が、その場限りの嘘だったとしても。
自分は彼に愛されなくても。
それでもいい。
ただ、その存在までは消さないでほしい。
願いは、それだけだった。
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