夜に口遊むには寂しすぎた
過ぎ行く夏霧
その眼差しに騙されてあげたかったのに

抱擁すら疎ましく思っていた頃のわたしはきっと魔物と呼ぶにふさわしいものだったことでしょう

瘡蓋だらけの心
罪をほしいままに積み重ねて
恋心陶酔

あなたが悲劇と呼ぶ人魚姫は幸せな最期を迎えたと思うよ
すべてを捨ててきみを想うことができたならば
不死鳥たちのカーニバル
鏡に映った劣等感に負けてしまっていた

弱い自分が許せなくて世界に反旗を翻した、はずだった。全てを失ってから気付くものは、本当に尊いと呼べたものでしたか?

膿んだ愛心に甘噛み
穢された献身の行く先
ふさわしい最期なら笑ってみとってあげたのに

三日月を背にただ立ち尽くしていた
(わたしの刃が擦れ切れてしまっていた夜のお話)

嘴(くちばし)だけ大人になって嘯(うそぶ)いていた青春に息づく私たちがいた

誰も望んでいない夜に私がいたこと
私が傷つけたのに貴方が許したこと
夕立の涙さえ嘲笑に聞こえたんだ

幻夢の彼方にお別れを
さよなら、さよなら、わたしの声が小夜に沈んでいく
摩耗した愛に負けてしまわないように

この両腕にあなたの温度が灯って生きていけない
(あなたを思い出さずには生きていけない)
(あなたがいないのにこんな熱はいらない)

お願い、やさしい喪失に騙して
諦め方なんて誰も教えてくれなかった

零度の感情
慰めの夜ですら貴女を傷つけるのですね

ゆるやかに鬱血痕が消えていく、そうしてわたしはあなたを忘れていくのでしょうね。そうしてあなたは過去になっていくんでしょうね。
わたしがあなたを覚えているうちに、もう一度わたしを愛してよ。優しくなんかしないで乱暴でいい、わたしに消えない証を頂戴。
こうして夜が終わって朝が来て、頬を濡らした涙も昨日になって、あなたの痕跡を居場所を消していくこの時間が嫌い。
ねえ、わたしはいつまであなたを覚えていられるでしょうか。


侘しい香炉
追憶の中でさよならを重ねた
ぼやけていく痕跡と黎明
お別れの仕方だけ上手くなってしまっていた
「ただ一つの約束もできなくてごめんね」

祈りも願いも叶わない世界に生まれてしまったことをいつか悔いるとしても、あなたと出会えたことはそれにも勝る幸福でした

本懐不在
ガーネット・ユーモア
すべてを終えた指先であなたを乞う
きみは膜を被った怪物なのです
ハッピーエンドがわたしを食い殺したその日

花筏葬列
ひとつまみの希望
はだしで逃げた幸せたち
裏山に星屑を撒いて
懐の流星を差し出すその日まで
幸福染めの魔法
うつくしい夜明けを待ち続けて幾千年

不揃いだらけの明日を恨んだこともありましたけど、今なら不恰好な二人でも許せる気がしたのです


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