夕餉

汚れた雑巾を洗って、風呂場に干してキッチンに戻る。騒がしい話し声が聞こえてきて、強張っていた肩の力が抜けた。

「どうなったか?」
ヒョイとドアから顔を出すと、目が合った伊達が親指を立てた。完璧っすよ〜と聞こえてきた萩の声の後に、降谷の罵声が響く。どうやら完璧ではないらしい。

「右の部屋片付けたからお前らの誰かはそこな。それ以外はそいつの部屋」
それかココ、とソファを指さすと了解ですと素直な返事が返ってきた。

「…右の部屋片付けたのか」
「そ」
軽く返事をすると、弟の鋭い視線が背中に刺さった。客人用の箸を取り出しながら、視線を避ける。

「大掃除おまえ雑すぎんだろ」
机を拭き終わった陣平に箸を手渡しながら文句を言えば、うっせ、と返ってきた。


ズラリとカウンターに並んだ料理に歓声が聞こえた。今までバイキングぐらいでしか見たことのない品数にぎょっとする。よく見ると、比較的日持ちのする料理はタッパーに入っていた。

「なるほど、発想がちげぇわ」
「さすが、ウチの班の主夫ズ」
パチパチと適当な拍手に、主夫ズが軽く見えない民衆に向かって手を振った。

「てことで、今食べるモノ以外、冷蔵しときますね」
ぱちんぱこんとタッパーに蓋をしていく作業を全員でする。あっという間に豪華な食事で冷蔵庫が埋まっていくのに軽く感動した。久々にこんなに詰まっている冷蔵庫をみた。どうせ客人達により減っていくだろうが、ここまでしてくれた事には感謝である。

色とりどりの野菜を使いつつもガッツリと肉多めと言う理想的な食事が並ぶ。パチンと幼稚園児の様に一斉に手を合わせた瞬間、底の見え始めた料理に思わず顔が引き立った。

口いっぱいに詰め込んで飲み込む度に口を開く。

「そういや、そろそろまた警備実施だな」
「最悪」
「あれは心を殺すのがポイントだろ」
「本当に、あれはやばい」

「ってか、この肉めっちゃ柔らかい」
「めちゃくちゃ美味しい」
「じっくり煮込むと柔らかくなります」

賑やかな食卓は本当に久しぶりだと気がついた。
どかんと一つ皿の上に置かれた肉を、ナイフを使って丁寧に切る。漫画でしか見たことのない様な肉が綺麗に骨から削ぎ落とされた。

「あーすげぇ」
「仕事がら肉を切るのは慣れてんだ」
眉を上げると、真顔になった萩原と目があって、それをみた降谷と一緒に指を刺して笑った。
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