東京空虚ラバーズ
一、愛想ラバーズ 二、正義ラバーズ
三、偽者ラバーズ 四、空虚ラバーズ

「もう同じ過ちを繰り返してほしくなかったんだと思うよ」
乾いた風が足元をくすぐった。
「あの頃当たり前になっていたことの内の多くが、きっと間違いだったんだよ。でも当時の人々はその間違いごと自分を信じてたんだ」
陽が傾いていた。オレンジ色の鋭い西日が僕らを照らす。
「だから、おじいちゃんはああ言ったんだと思う。自分の信じていることを疑ってみなさいって意味で」
アキラの説明はなんだか抽象的過ぎてよく分からなかったけれど、何かがすっと胸に落ちた気がした。
「たぶんこの町を創り上げた人たちは、気付けなかったんだね」
そう言ってアキラは突然足を止めた。そしてしゃがみこみ、道端の小さな小さな緑の芽を優しく撫でた。
「文明だけが"進歩"じゃないって」
僕を見上げてにやりと笑う。アキラ。僕も無意識の内に口角が上がっていた。
「行こう、アキラ」
「うん」
僕らは手を取り合った。
「浪漫だって夢だって全部飲み込んでやる。――僕は、」
ぎゅ、と握り合った手に力がこもった。
「ぼくらは、この空虚を愛してみせる」
西日の射す時間は、なんとなくノスタルジー。いつか忘れた空虚な町を、地球の哀しい夢を、ぼくらは歩く。歩き続ける。愛しい太陽よ、どうか待っていておくれ。この東京の空虚を、ぼくらが身体全部で愛せるその時が来るまで────



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