東京空虚ラバーズ
一、愛想ラバーズ 二、正義ラバーズ
三、偽者ラバーズ 四、空虚ラバーズ

「放せ」
「誰かが悪行を働いたらそれと同等か、それ以上の制裁を加えなければならない?」
「そうだ。……放せ!」
ぱっと少年の足を放し、勢いのままにその左頬に渾身の拳を入れた。小さなうめき声と共に少年が倒れる。倒れた少年に近付き、迷いなくその紙袋を脱がせた。黒髪の、精悍な顔立ちをした少年だった。奪った紙袋をびりびりに破り捨てると、少年は悔しそうに唇を噛んだ。
「どうして分からないの。そんなことしたら、それこそ過ちを繰り返すだけだって」
少年の鋭い視線が僕に向けられる。
「やられたらやり返す。殺されたら、殺す。そんなんじゃいつまで経っても前に進めない」
離れてことの成り行きを見守っていたアキラが近付いてきた。
「強くならなきゃ」
横からアキラの声が聞こえた。
「ボクらがこの町で求められているのは、強くなることだ。助けを求めて縋るんじゃなくて、一人一人が強くならなきゃ。紙袋くんがしてるのはきっと、その手助けなんだよ」
アキラが少年を見下ろして静かに話す。顔を俯かせた少年を一瞥してから、アキラは僕の腕を取った。
「行こう、紙袋くん」
「うん」
いつか一緒に強くなれることを願って、僕たちはその場を後にした。


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