東京空虚ラバーズ
一、愛想ラバーズ 二、正義ラバーズ
三、偽者ラバーズ 四、空虚ラバーズ

「"過剰な正義"だ」
鞄を持ち直して、アキラは言葉を続けた。
「このまま野放しにしておいたら人を殺しかねないと思うよ、ボクは」
なんたって相手は煙草の吸殻を捨てただけで骨を折るような人間だ。アキラの言うことはもっともだと思った。
「でも、対策って一体何をするの」
「うん、そこだよね」
顔をしかめて何かを考えるアキラ。
「直接会って話をつけるのが一番手っ取り早いとは思うけど、どこの誰だかもわかんないし」
アキラと一緒になって僕も頭を悩ませる。どこの誰かも分からない相手に何かを伝えるのは、なかなか難しい。
「向こうに探してもらうしかない」
ぽつり、呟くと、アキラは丸い目を僕に向けた。
「こっちからは探せない。だったら、向こうに探してもらうしかないだろ」
にやりと笑えば、アキラもまた同じように笑った。

紙袋を被って、ただ町を練り歩いた。アキラは少し離れたところから僕を見張っているはずだ。一緒に居るところを偽物に見られたら危ないからと、僕はアキラを家に帰そうとした。しかしアキラは偽物の顔が見たいと強情に言い張り、最終的に僕からは少し離れて行動するというところで落ち着いた。
偽物の紙袋くんが、一体何を目的に動いているのか分からなかった。本物である僕にどんな感情を抱いているのかも分からない。僕を仲間と思っているのか、それとも。
僕はただ、彼の過剰な正義をやめさせたかった。いくら悪いことをだからといって、煙草の吸殻を捨てたくらいで骨を折るのは度が過ぎている。その過剰さを無くしさえすれば、僕としては偽物の紙袋くんが居ようが構わなかった。アキラは構うだろうが。
人気の多い場所を歩いた。その方がニセ紙袋くんの目に付く可能性が高いと思ったからだ。指を指されたり声を掛けられたりしたが、すべて無視。僕の目的はニセ紙袋くんだけだった。
「ちょっとそこのオニーサン」
少し歩き疲れてきたところで、真横から声を掛けられた。見れば、狭い路地の隙間に一人の少年が立っている。紙袋を被った、少年が。
「ついて来て」
短く言い残し、少年は踵を返して狭い路地の中へ進んでいく。僕は素直に後を追いかけた。やがて少年は小さな空き地に入り、足を止めた。
「わざわざそんな格好で町をふらついてたってことは、僕を探してたんでしょ」
ニセ紙袋くんがポケットに手を入れたまま振り返って話し出す。制服も同じ。背格好も僕に似ている。
「……君の目的は、一体なに」
率直に、一番の疑問を口にする。少年が紙袋の中で含み笑いをしたのが分かった。



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