恋は盲目 (1/7)

 マナーにしてあった携帯の画面を覗き、表示された着信履歴にスザクは大きな溜息をつく。総て同じ名前で37件。ここ1時間以内のものだから、2分間に1回以上電話してきている計算になる。
 「どうした、スザク? 浮かない顔をして」
ルルーシュの紫苑の瞳が心配そうに曇っていることに気付いて、スザクは無理矢理笑みを作った。
「ちょっとね。ロロはもう寝たの?」
「あぁ。元々少し熱があったからな」
「ごめん、大変な時に邪魔して。やっぱり僕、帰…」
「馬鹿。ロロだってお前が居て喜んでいるさ。それに、何か悩んでることがあるんだろう?」
ルルーシュに、コツンと額を小突かれてスザクは苦笑する。確かに相談したいことがあったのだが、何から話していいかわからない。手始めにスザクは悩みの種の一つである携帯電話をルルーシュに差し出した。画面には着信履歴が映し出されたままだ。
「ジノ、ジノ、ジノ、ジノ…ジノ…おい、緊急の連絡か何かなんじゃないのか? でないと、こんなに連続で…」
「いつものことなんだ」
スザクはルルーシュの言葉を遮って、重々しい声色で告げた。
「仕事の連絡も確かにあるから、拒否するわけにもいかなくて…。でも特に用がなくても、一緒に居なくてジノが出撃中じゃない時は大体こんな感じ」
説明している側で携帯電話が振動した。ディスプレイにはジノからの着信の表示。スザクは重い溜息と共にルルーシュの手から携帯電話を攫って、通話ボタンを押した。
「もしもし、ジノ? しつこいんだけど。用がないなら電話して来ないでくれないかな?」
「用ならあるぜ。スザクの声が聞きたかった」
「そう。じゃあ、もう聞いたから満足しただろ? 切るよ…」
「待てよ、スザクぅ。どうしてそんな冷たいんだよ? ルルーシュ先輩が一緒だから? 酷いじゃないか。私というものがありながら、こんな遅くまで他の男の家に居て。スザクは悪い子だな」
スザクはジノの言葉に固まった。謂われのない言い掛かりもさることながら、ルルーシュの家に来ることをジノには伝えていない。どうして彼がそれを知っているのか。
 「おい、ジノに知らせて来たのか?」
横で会話を聞いていたルルーシュが、スザクの表情を不信に思って問いかける。スザクは無言のまま、首を大きく横に振った。
「だったら、どうして…」
ルルーシュの疑問の返事はスザクからではなく、電話口のジノから発せられた。
「後ろ見てくださいよ、ルルーシュ先輩」
スザクとルルーシュが、弾かれたように後ろを振り返る。
 振り返った先、窓を隔てた向こう側で耳に携帯電話を当てたジノが明るい笑みと共に手を振っていた。


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