恋は盲目 (5/7)


 逃げるように駆け込んだキャメロットのトレーラーは、まだ灯りが付いていた。
「おかえり〜。こんな時間にこっちに帰って来るなんて、珍しいねぇ」
コンソールのキーボードを鳴らしながら、ロイドが振り返る。最早恒例となっている言葉は、シュナイゼルに言われた時と違って温かくスザクの心に響く。
 「ただいま…戻りました…」
心底安堵しながら、スザクは力尽きるようにその場に座り込んだ。
 「…おや〜。君が泣くなんて、珍しいね〜。どっか故障しちゃった?」
ロイドの言葉にスザクは困惑したように顔を上げる。その拍子頬を伝い落ちた雫が膝に落ちるのを見て、初めて自分が泣いているのだと気付いた。
 「あれ、僕……すみません…」
スザクは慌てて手袋で涙を拭ったが、皮で出来たそれは上手く水分を吸収してくれず肌の上を涙で滑るばかりだ。
「別にいいんじゃないの〜? セシル君ももう帰っちゃったし…」
いつの間にかキーボードの音が止み、目の前にロイドが立っていた。
 いつもの飄々とした笑み。掴み所のないおっとりとした口調。何故かは分からないが、慣れ親しんでいるそれらがスザクの涙腺を緩めてしまう。スザクは堰を切ったように涙を零しながら、今日一日の出来事をロイドに語ったのだった。


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