恋は盲目 (2/7)

 驚きに立ち竦んでいたスザクの手をルルーシュが引っ張った。彼に手を引かれるままに、二人でルルーシュの私室へと逃げ込む。
「ハァ、ハァ…念のために…訊いておきたいことが…あるんだが…」
リビングから自室まで走っただけだというのに、息を切らしているルルーシュに呆れながら、スザクはスザクで驚きのあまり安定しない心拍数を整えながら彼へと向き直る。
「何?」
「お前とジノは、恋人同士なのか?」
電話口でのジノの言い分だけ聞けば、そういう疑念が生まれるのも仕方のないことだ。だがスザクにはまったく身に覚えのないことで、決然として首を横に振る。
「まさか」
「そうだよな。スザクは俺のものだからな。当たり前のことを訊いて悪かったな」
いつものルルーシュだった。冷静で理性的な口調で当然のように言い放たれた言葉。スザクは違和感を覚えたものの、その違和感を頭の中で理解するまでに時間を要した。
「ル、ルルーシュ? 今なんて…」
「え? だから、恋人のお前を疑ったりして悪かったなって言ってるんだ。お前は昔から俺一筋なのにな」
ルルーシュの綺麗な顔が優しげな笑みを形作るのを見て、スザクは背筋に冷たい何かが流れ落ちるのを感じた。
「あの…ルルーシュと僕は別に恋人同士じゃ…」
「何言ってるんだ、スザク? 俺以外の誰がお前の恋人に相応しいって言うんだ。お前のことは俺が一番よく知ってる」
「そういう問題じゃなくて…」
「例えばお前は昨日学校を2限目で早退してから、1107時より四国のレジスタンス相手に作戦行動。1258時に政庁に帰還して、ナナリー総督と昼食。昼食はハンバーグランチだったな。ナナリー総督が食べ切れなかった分を、彼女手ずから食べさせて貰っていたが、別に俺はお前と彼女の仲を疑ったりしていないから安心しろ。昼食後はナナリー総督に付き添って会議に出席、その後…」
すらすらと覚え書きを見るわけでもなく、空で述べられる自分の昨日一日の行動。スザクはいよいよ危機感を感じて後ずさった。
「どうしたんだ、スザク? 顔色が悪い。ジノのことなら、俺が守ってやるから心配するな」
そう言って伸ばされたルルーシュの手から逃れて、スザクはまた一歩後ろに下がった。その拍子背中が本棚にぶつかって、本棚が大きく揺れる。慌てて背中を反らしたものの、バサバサと背後で本の落ちる音がした。
「ごめん…」
慌てて振り返って本を拾おうと手を伸ばす。だが、その手は開いた状態で落ちたアルバムに触れたところで固まった。指先が触れたそのアルバムのページはスザクの写真ばかりだった。それも撮られた覚えのない写真が、日時と場所を明記された付箋と共に綺麗に収められている。試しにページを捲ってみたが、他のページも同じ様な有様だった。
 「ルルーシュ、これは…?」
「あぁ。その本棚にあるアルバムは、特に気に入った写真をプリントアウトして収めてあるんだ。他の写真はデータ媒体で置いてあるが、そうやって一冊のアルバムになっている方が風情があるだろ?」
スザクは絶句した。ルルーシュは悪びれる様子もなく、それどころか誇らしげですらある。スザクはぎこちない笑みを浮かべながら、粗雑な動作でアルバムを本棚に戻して立ち上がった。
「ルルーシュ、僕、今日はもう帰るね…」
言うが早いか踵を返して走り出す。
「おい、待て!! 今日は泊まって…」
背後でルルーシュが引き留める声が聞こえたが、スザクは全力疾走で政庁へ向かう。途中でジノを轢いたような気がしたが、気にている余裕があるはずもなかった。


[*prev]  [next#]
[目次へ] [しおりを挟む]

  



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -