決闘は愛という名の剣で (4/5)


 「その決闘、待った!!」
ちょうどジノが地を蹴り、距離を詰めようとした時だった。響いた声に、双方が動きを止める。ルルーシュもジノもその声を聞き違える筈がなかった。
 「「スザク!!」」
驚愕の声が重なる。ルルーシュはスザクに決闘のことを伝えていない。また、ジノも同様だろう。なのに、どうして…。相容れない二人が、その動揺を共有していた。
 スザクは二人の間に割って入る。
「二人とも、こんな馬鹿なことは止めるんだ」
セリフはどこかのヒロインのようだが、告げる口調はそんな弱々しいものではない。翡翠の瞳が強い意志を持って二人を睨んでいる。
 「悪いがスザク。俺は俺の想いを示すために、退くことはできない!!」
ルルーシュはスザクに負けじと言い放った。
「ルルーシュ…」
スザクの瞳が哀しそうに眇められる。ルルーシュは胸が傷んだが、例えスザクを傷付けてもスザクの愛を他人に譲るつもりはなかった。
 「スザク。これは俺達双方が同意しての決闘だ。例えお前でも、止めることは許されない」
ジノが厳しい口調で言い放つ。スザクは深く眉間に皺を刻むと、ルルーシュの方に歩み寄った。
 「スザク?」
ジノが困惑した声を上げるのを無視して、スザクはルルーシュに手を差し出す。
「剣を貸して、ルルーシュ」
「スザク、何を…」
戸惑うルルーシュから、スザクはあっさりと剣を奪い取った。双方の身体能力とイレギュラーに弱いルルーシュの性格上、それは当然の結果だ。
 「どういうつもりだ、スザク」
「決闘に代理を立てることは許されている筈だよ、ジノ」
問い質すジノに答えて、スザクが剣を構えた。
「例え誰であろうと、ルルーシュを傷付けることは許さない。君はルルーシュを殺すつもりだったんだろう?」
「…いいだろう、スザク。但しスザクが代理でも、私が勝ったら条件は守って貰う。お前も条件に同意したと受け取っていいんだな?」
 それはジノとルルーシュの間だけで交わされた条件だ。だが、スザクがルルーシュの代理として参加するということは、スザク自身にも決闘の条件を遵守して貰うとジノは言っている。つまりジノが勝ってもルルーシュの命は助かるが、スザクがどれだけルルーシュを愛していても二人の関係は絶たれることになる。堅物のスザクが誓約を違えることは考えにくい。
 「待て、スザク!!」
ルルーシュは、スザクを止めようと叫んだ。相手はナイト・オブ・スリー。その上、体格的にもジノの方が有利だ。
  だが、ルルーシュの静止の言葉をスザクは聞こうとはしなかった。スザクは落ちていた鞘を拾って、ルルーシュに差し出した。笑顔と共に。
「大丈夫だよ、ルルーシュ。だからこれ、預かっておいて」
「馬鹿!! 負けたらどうするんだっ。俺はお前の気持ちまで、失うことになるんだぞ!!」
「勝てるよ。君がそう望んで応援してくれるなら」
「根拠もなく安請け合いをするな、この馬鹿!!」
ルルーシュは能天気で楽観的なスザクの言葉に頭痛を覚えた。昔に比べたら大分大人しくなったと思っていたのに、こういうところは全然変わっていないと思う。だがルルーシュが怒鳴りつけてやっても、スザクはまったく堪えた様子なく微笑を浮かべる。
 「根拠ならあるよ。俺とお前が力を合わせたら、何だってできるだろ?」
そう言われた時、ルルーシュはこの幼なじみには一生適わないのだと悟った。
 実際に剣を合わせてみると、スザクとジノの実力は切迫していた。だがルルーシュはスザクの勝利を疑わなかった。
 そしてルルーシュの信頼に応えてスザクは勝利した。ジノの手から剣が飛ばされ、地面に深々と突き刺さった瞬間、ルルーシュはゼロを辞めることを決意した。
 「俺の言った通りだっただろ?」
幼い頃見た翳りのない笑顔で、誇らしげに剣を掲げるスザク。彼と一緒なら仮面などなくとも世界を変えられると、ルルーシュはそう確信していた。

 END


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