神の愛、人の愛 5 (4/5)

 「お話したいことは沢山あるんですけれど、それを演説の原稿にするとなると、なかなか上手く言葉が思いつかなくて…」
「別に特別な言葉にする必要はないと思うよ。ユフィが思っていることをユフィの言葉で…解りやすく伝えられればそれでいいと思うけど…。ちょっと貸してみて?」
 スザクはユフィの羽根ペンを受け取って、彼女が書いたメモ書きを元に、すらすらと原稿を書き上げていく。ユフィの人柄や喋り方を思い浮かべて口語調で描き上げた文章は、解りやすい言葉で順序良く彼女の伝えたいことが述べられていた。
 「まぁ。スザク、凄い!! 貴方ってこんな才能もあったのですねっ」
ユフィが大袈裟に感動して手を叩くのに、スザクは照れ臭そうに頭を掻く。
「才能とか…そんな大袈裟なものじゃないんだけど。ただ、小さい頃から演説するのが仕事みたいなものだったから…自然と」
「スザクは魔法の国の王子様ですものね」
「いや、何か色々違うけど……。まぁ、いいか」
スザクは困惑したように寄せた眉をふっと緩めて破顔した。
 自身を今まで様々な意味で縛ってきた出自さえ、ユフィに言わせれば「魔法の国の王子様」の一言なのだ。それがなんだか可笑しくて、笑えてくる。「魔法の国の王子様」に縛られている自分が滑稽で。その重責が彼女の一言でふっと軽くなることが、嬉しくて。
 笑い声のなかなか止まないスザクの様子に、ユフィはまた自身が笑われていると思ったのか、
「そんなに笑わないで下さい…」
と赤くなった頬をまた膨らました。
 薔薇色に膨らんだその頬も、スザクが「ごめん、ユフィ」と一言謝るとふっと表情を緩めて浮かべる微笑も、その総てが愛おしかった。


 to be continued


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