神の愛、人の愛 2 (2/4)


 「枢木卿ですか? 先程シュナイゼル殿下と一緒にタウラスの離宮に入られるのを見ましたが…」
手当たり次第にスザクを知らないかと聞いて回って得た成果。その情報を提供してくれた衛兵に礼を告げて、ジノは馬を駆ってタウラスの離宮へと向かう。
 タウラスの離宮は、皇帝からシュナイゼルに与えられた離宮だ。そろそろ寵姫の一人でも囲えとの言葉と共に与えられたのだが、シュナイゼルには一向にその兆候がない。ペンドラゴンから少し離れた郊外にある離宮はいつも綺麗に手入れされているが、それだけ。警備もなければ、人が住んでいる様子もない。
 ジノが訪れた時も、その場所はシンと静まりかえっていた。静けさの中、庭園から小鳥の鳴き声だけが聞こえてくる。見張りの一人もいないその離宮の門が少しだけ開いていた。
 ジノはその静けさを破るのも憚られ、ひっそりと中へと足を踏み入れる。手入れされた庭園は白を中心とした淡い色の花が、春の賑わいと咲き誇っている。そしてその庭園で、真っ白な馬が繋がれて草をはんでいた。
「ランスロット!!」
呼びかけるとその馬はジノを振り返り、微かに鳴き声を上げる。スザクの愛馬ランスロットだ。馬が彼しかいないということは、シュナイゼルは恐らくスザクの馬に乗せられて来たのだろう。ジノはランスロットの頬を撫でながら、小さな宮殿を見上げる。染み一つない白亜の宮殿は、いかにもシュナイゼルの宮殿らしい上品な外観だ。その磨き上げられた窓の一つに人影が見える。1階の一番端の窓だった。
 ジノはランスロットを離れて、その窓へと歩み寄る。ランスロットが何かを警告するように低く嘶いた。だが、ジノは気付かずに窓へと歩み寄る。微かに開いているその窓から吹き込む風に、止められたカーテンの裾が靡いていた。
 窓から見えたのは、豪奢な天蓋付きのベッドの置かれた寝室。そこには二人の男が立っていた。一人は2mに届く程の長身の男。烟るような美しい金髪が光を反射して輝いている。そして、もう一人はジノのよく知る人物。青い外套と茶色の癖毛が、微かに揺れる。シュナイゼルとスザクだった。
 ジノは声をかけようと口を開く。窓の外から失礼だとは思ったが、寛大なシュナイゼルは気にしないだろう。スザクには怒られるかもしれないが、そんなのはいつものことだ。
 だが、開いた口はスザクの名を発することができなかった。
「ス…ッ……!!!」
目の前で起こった出来事に息が詰まる。大きく見開いた、ジノの蒼天の瞳の中で、シュナイゼルとスザクの唇が重なっていた。


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