「名前はん」
「あ、銀さんおはよー」

朝、登校してきたばかりの私を呼び止めたのは、銀さんだった。

「おはよう。それから、誕生日おめでとう」
「あっ! 銀さん覚えててくれたの!? ありがとう!」

銀さんは小さな花束をくれた。 なんて名前の花か分からないけど、花壇でよく見る、白い花びらの可愛いお花だ。

「喜んでもらえたみたいやな」
「うん! 大事に飾っとくね!」

じゃあまた部活で、と手を振って別れた。 もう、銀さん大好き。

今日はいい日になりそうだ。

「名前!」
「名前ちゃあーん」
「ふああああ、あ? 小春ちゃんにユウジだー。どしたの」

一時間目が終わったあと、あくびをして いたら声をかけられた。

「お誕生日おめでとう〜!」
「あーっ! これ欲しかったやつ! 小春ちゃん大好き愛してる!」
「いやん、アタシも愛してるわよ!」
「浮気か! 死なすど!」

小春ちゃんがくれたのは、先週一緒に雑貨屋さんに行ったときに欲しいなあ、って言ったクマのぬいぐるみだった。でもちょっと今月ピンチだからって諦め たやつ。

来月まで置いてるかなあって不安だった んだよね。 小春ちゃんさすが、女の子の気持ち分 かってる!

「ほらぁ照れてないでユウくんも!」
「照れてへんわ! ……ほら、これやる」
「あ、これもしかして手作り!?」

ユウジは手先が器用だ。お笑いの小道具や衣装もよく手作りしている。 渡されたピンクのシュシュは何にも包ま れていなくて剥き出しだし、タグもついていない。

「こんくらい余裕やわ」
「すっごーいお店で作ったやつみたい! ユウジ女子力高い! 痛っ」
「馬鹿にしとんのか我ェ!」
「ええ!? 褒めたのに!?」

何故かしばかれてしまった。 …けど、このシュシュ可愛いな。さすが、 センスいい。

「二人とも、ありがとう!」

二時間目のあとには、3-2コンビがやって きた。

「どや、俺が一番にプレゼント届けにき たやろ!?」

なっ、なっ!と嬉しそうな謙也には悪いけど。

「いや、謙也四番目」
「なっ…!? なんやと…!?」

がくん、と床に膝をついて謙也は大げさに絶望している。

「名前、誕生日おめでとうなー」
「ありがとう白石!」
「中身は日用品やからな、無駄ないや ろ?」
「わ、ありがとう!」

実用的なプレゼントも嬉しいものだ。 ほくほくと包みを受け取ったら、白石は まだ落ち込んでいる謙也を足でつつい た。

「いつまでうちひしがれてんねん。五番 目になったけどプレゼント渡さんかい」
「ああっいつの間に!? ほな、これが俺からのプレゼントな」

ドヤ顔で渡されたのは……イグアナ?の キーホルダー。

「かわええやろー!」
「う…、うん」

私は平気なほうだからいいけど、女子に爬虫類のキーホルダーってどうかと思うよ……。 とは思ったけど、まあこれ以上いじめる のも可哀そうなので黙っておくことにし た。

「名前ー、誕生日おめでとう」
「あ、小石川くん!」

三時間目の移動教室、廊下ですれ違った 小石川くんもおめでとうを言ってくれ た。

「オサムちゃんとケーキ用意したから、 部活終わったあと皆で食おうな」
「えっ! ほんと!? ありがとう!」
「ああ、言うてもそんな大したもんちゃ うけどな」 「いいよいいよ! すっごく嬉しい!」

テニス部、みんなすごく気が回るなあ。 嬉しさを噛みしめていたらチャイムが 鳴って、私も小石川くんも慌てて教室へ 駆け込んだ。

「お、名前〜」

お昼休み、中庭を歩いていたら繁みからむくりと起き上がったのは千歳だ。

「千歳、またサボってたの?」
「今日、誕生日やったとね」

私の質問には答えず、おいでおいでをし た。

「何?」
「誕生日プレゼント」

そう言って、ひょいっと出されたのは――

「にゃあ」
「って、猫!?」
「ここらによう来るとよ。猫好いと う?」
「大好き!」
「遊んで行かんね」
「行くー!」

黒いふわっふわの子猫。 どこから来たのか分からないけど、自然の多いここには犬やら猫やらよく入って くる。
お昼休みの三十分間、たっぷり癒しタイ ムを堪能した。

「名前姉ちゃーん!」
「ぐふっ!」

い、痛い……! この鋭く重みのあるタックルは……。

「き、金ちゃん」
「なあなあ、今日誕生日なんや ろー!?」
「あ、うん、そうだよ」
「ほな、これ!」

ずいっ、と金ちゃんが嬉しそうに差し出 したのは食券だった。

「あ、食いだおれ丼の! 金ちゃん、い いの?」
「おん、ワイはまた買うからええね ん!」

誰より食べるのが大好きなのに、ああもう金ちゃん天使!可愛い!

「ありがとう! じゃあ、これ食べる時 一緒に食べよう!」
「え、ほんまに!?」
「うん、多分私、食べきれないし」
「ほんなら約束な!」
「うんっ!」

金ちゃんと指切りをして、私はその食券 を大事にお財布にしまった。

「ふっふふ〜ん」
「……」
「ふふ〜ふん〜」
「……先輩、邪魔なんスけど」
「ふわあっ!?」

ざ、財前くん……! やばい、鼻歌きかれた!恥ずかし!

「ご、ごめんごめん」
「……なんスか、その荷物」
「あっ、これ? 皆がくれた誕生日プレ ゼントだよ」
「ああ、今日やったんスね」
「うん!」
「……」
「……」

……あれ?

「そこはさぁ、おめでとうくらい言おう よー」
「やって、俺別にプレゼントとか無いで すし」
「プレゼントは要求しないけどさ……」

乙女心の分からん奴め。 ま、そんなこと昔から知ってるけど。 知ってるけど! 財前くんにおめでとうって言われるの楽しみにしてたのに。

ちぇー、と口に出しながら部室を出よう としたら。

「先輩」

財前くんに呼び止められて、振り返っ た。

「なに…ってうおわああ!」
「色気ない声ッスね」
「余計なお世話だよ! ていうか、財前 くんが近いからっ!」

や、やばい、顔が赤いのが自分でも分か る。 一歩引いたら、一歩詰めてきた。

「ちょ、ちょっと」
「プレゼント……欲しいですか?」 「え……、う、えっ?」

じっと見つめる目が綺麗だ。睫毛なっ が。肌も白くてキメ細かいし。女の敵め。 混乱して心の中で罵倒していたら、今度 は冷たい手が頬に添えられた。

「ざっ、財前くん!?」
「なんですか」
「なんですかじゃなくて……!」

こっちがなんですかだよなんだよこの状 況!

「プレゼント、欲しいですか」
「……ほ、欲しい、です」
「なら、目つむってください」

え、えっ、嘘でしょ、そんな少女漫画み たいな。 でももしかして、もしかするの? え、 マジで?

「はよ」
「はっ、はい!」

ぎゅっと目をつむる。 やばい、どうしよう、手めちゃくちゃ震 えてる。 心臓がばくばくしてる、壊れそう。 多分そんなに時間は経っていないはずな のに、すごく永く感じた。

もう、すぐそこに財前くんの呼吸を感じ て――――

「むぐうっ!?」
「うわ、間抜け面ー」

財前くんにほっぺたを挟まれて、って痛 い痛い痛い! 本気で痛くて目の前の胸板をばしばし叩 いたら、ようやく離してくれた。

「財前くんっ!」

何すんの、って私の横を通り過ぎてのん びりコートへ向かう彼に怒鳴ったら、振 り返って、にやりとする。

「なんですか、キスでもされると思いま した?」 「なっ……!」

誰でも思うわあんなのされたらっ!

「それは、もうちょい先なんで」
「えっ!?」
「誕生日、おめでとうございます」
「!」

ずるいよ馬鹿。 どきどきしすぎて痛い心臓をおさえて、 思う。

今年の誕生日は、朝思ったとおり今まで 一番いい誕生日だ、って。



美沙ちゃんありがとう!!!さいっこうの誕生日です!なにこれ四天宝寺みんなに祝われてんじゃん、そんで最後は私の本命なう財前くん!うわぁ、かっこいい…かっこいいめちゃくちゃにやけちゃったじゃんか。これ来年はちゃんとちゅーしてくれるってやつだよね、ベッドの上でのたうちまわっておっこちたわ(真顔)いつもお世話になってます。蠍星かよってます!じゃっかるぅーじゃっかるぅー!美沙ちゃんのサイト運営、応援してます。本当にありがとう!!

back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -