(先輩後輩、幼馴染みパロ) 『俺さ、なんだかんだでお前とずっと一緒にいる気がしてたんだよな』 「なあに、それ」 そんなことあるわけないわ、と、妙は耳に押し当てた携帯電話に向かって言った。 妙が坂田の声を聞くのは四ヶ月ぶりのことだった。三月に行われた卒業式では言葉を何個か交わして、それっきりだ。 坂田の卒業後、妙は何度かメールを送ったことがあるが、一度も返信が来た試しがない。だからもしも、あっちから連絡を寄こした時は絶対反応してやるものかと妙は決めていた。 けれどもこうして、鳴り響いた携帯電話に表示された発信者の名前を見た瞬間、妙は飛びつくようにして電話に出てしまった。一生の不覚だ。 『可笑しな話だよな。何処からそんな自信が沸いてくるんだか分かんねえ。でもなぜだか、そんな確信があった」 「このままずっと、腐れ縁を引きずったまま一緒にいる確信?」 『そう、それ』 「ありえないでしょう、そんなの」 ありえない、と笑い飛ばす。幼い頃だったら、そんな夢物語を信じていたかもしれない。それこそ、あの頃は「銀時くん」「妙ちゃん」と呼び合っていた仲だった。それがいつからか、「坂田くん」「妙」になって、最終的には「先輩」「志村」になった。 いつからだろう。いつから、自分たちはこんなにも離れてしまったんだろうかと妙は思案する。何年もの間、近くにいた気がするのに、今ではどんな誰かよりも坂田との距離が遠くなってしまっている。 「・・・あの、」 『うん?』 「電話、して。これからも。たまにでいいから、電話ください」 押し当てていた携帯電話をさらに強く、強く耳に当てる。 出来ることなら、この電話を永遠に繋いでおきたいと妙は思う。もっともっと、坂田の声を聞いていたい。 そんな、どうしようもなく強い感情が、妙の胸を締めつけている。親しい先輩もしくは幼馴染みがいなくなったことへの虚無感だとか、そういうのとはちょっと違う。この感情に何と名前をつければ良いのか、妙にはよく分からない。 『悪ィけど、それは無理だな』 「えっ」 『たぶん、これからはもっと話せなくなる』 「・・・やだ、そんなの」 嫌だ、嫌よと、つたない言葉を繰り返す。これから先、坂田と会うことが滅多にないのかもしれないと思うと、妙は居ても立ってもいられないのだった。 『うん、俺もやだな』 はっとして息を飲み込む。妙は大きく驚いていた。いやだと繰り返す妙を、子供みたいだと馬鹿にされると妙は予想していた。しかし坂田は自分もだと言って来たのだ。 『なーんか、足りない気がするんだよなァ』 「足りない?」 『ほら、お前に憎まれ口叩いたり、お前と小さいことで揉めたりしてない今は、何かか足りない気がする。大切な、パーツ的なものが』 大切。たいせつ。タイセツ。聞こえてきた坂田の声を、咀嚼するように妙は舌の上で何度も言葉をなぞった。 『今さらだけどさ、俺やっぱ、お前がいないと駄目かもしんない』 坂田の声が、鼓膜を通して妙の心臓にまで染み渡っていくような。そんな感じがした。 どうして今になってそんなことを言うのだと憤慨したい気持ちを押さえて、「ねえ」と、妙は坂田を呼んだ。 「私、昔から我慢をするのが得意だったでしょう?」 『ああ』 「でもね、私は今すっごく、先輩に会いたい。我慢なんて全然できっこないくらい。会いたいの。直接会って、たくさん話したいとも思うんです」 ねえこれって恋なのかしら、私はあなたに恋をしていたのかしら。だったらどうしてこんなになるまで気づかなかったのかしらね、もっと早く気付いていたら私たち、ずっと一緒にいられたのかしら。 その時、『たえ』と、ゆっくり名前を呼ばれる。心臓が跳ねた。つくづく、自分は鈍い女だと思った。一度離れてしまわないと、この声の愛おしさに気づかないなんて。 決して離れたくない恋だった ≫宙さん 企画参加ありがとうございます!学パロは美味しいですよね^^ 妙ちゃんが寂しい感じっていうリクでしたが、寂しさ出せてますかね汗 私もstkし続けます!こんな変態な私ですけどもこれからも仲良くしてやってくださると嬉しいです!リクエストありがとうございました! 戻る |