君を見ていた 2/2



ベルトを外されて、下着ごとズボンを中途半端に脱がされた。他の席から死角とはいえ、気が気ではない。萎えた性器を見て若い方の男がほくそ笑み、握ってゆるく扱き始める。ただ擦られているという感覚が奇妙だ。
「もっとリラックスして、そしたら気持ち良くなるよ」
「ふ、ぅ……っう、む…無理、……っ」
簡単に言われてはいそうですかと気は抜けない。増して男の手だ。ゴツゴツとしていて、力の込め方も女とは違うし、恐怖や動揺が上回って勃起するところではなかった。そのせいで男の機嫌を損ねたらと嫌な想像まで膨らむ。
「足閉じないで。あー…駄目だこりゃ、全然反応しないし…まさかインポじゃないよね?」
「違っ、違う…!」
「若いのに勃ち悪いって、はは、変なの、可哀想」
「っるさい…ッ、違う、ほんとに…ぅ、やめ、て…」
先っぽに爪を立てられて痛い。気付けばひとつ目のバス停を通過していた。老人が一人よろめきながら近づいてきて、座った気配がした。心臓が痛いくらい跳ねている。もしも見つかったらと思うと、吐きそうだ。それでも二人の男は俺を犯そうと目をぎらつかせて、蠢いている。
「まあ、別にいいよ。使うのはこっちだし、ね」
「ひ、ぐっ…ぅっうう!」
強い力で片足を持ちあげられ、バランスを崩した俺はシートの上を滑った。そしてさっきまで股間を触っていた手が、後ろに滑ってくる。何をされそうになっているのかが分かって、ゾワッと体の中を悪いものがかけ巡った。
「嫌だッ!やめ、やっや、ぅ!ぐ、ん゙ん゙っ…!!」
叫びかけた俺の口を男は咄嗟に塞ぎ、穴を探りあてると指をいれようとしてきた。ずぐ〜っと人差し指か中指か、とにかく指先が入ってこようとしている。まさか入るわけがない。そう思うのに、浅く中を擦られて体が跳ねあがった。男の指の第一関節までを、俺は飲み込んだのだ。
「ん゙ぅ!くっ、…っ、っ!ふ、んぐぅ!」
痛みはほとんどなくとも、頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。身動きが取れない。俺を押さえつける男は、見た目こそ無害ではあるが、こういったことに慣れているとしか思えない。足は足で、口は手の平で、肩を肘で押さえつけられる。すっかり恐怖でどうにかなっている俺の両手は、馬鹿みたいに震えていた。
「わぁー…すごい締まりいい、入れたら気持ちよさそー」
男の言葉に俺は必死に頭を振った。とうとう涙も堪え切れなくなり、声も上手く出せなくなる。そんな俺に、男はへらりと笑いかける。
「なに怯えてるの。入れないから安心しなよ」
「ほ、……っと、に…っ、うくっ、ゆる、許して…っ」
「そんな泣くこと?お兄さん面白いね。ハマったらやばそう。でもまあ、これくらいは入れても大丈夫だよね?こっちも仕事なんだ」
あくまでも穏やかな声で言うと、男は一度指を引き抜いてゴソゴソと何かを取り出す。ピンク色のつるりとした小さな卵のようなそれは、見たことだけはある。スイッチを入れると、羽虫のような音を上げて、震えだすのだろう。
「これ入れるだけで終わり。簡単でしょ」
「やっや、ぁ゙!は、ぁぐ、んんぅ…!ぅ、ェっ」
乾いた肉の間を冷たいそれが入る。男の指先よりも少し太かったものの、入ってしまった。細いコードだけが尻から垂れているだろうことを想像してしまい、急に顔に熱が集まってきた。
「あれ?ほんとはこういうの好きだったり?」
「ぃっ…!違、違う、おれは、こっこんな…、あっ」
「とか言っちゃって…さっきより反応いい感じじゃん」
自分でもおかしいことに気付き、俺は今度こそ足を閉じることが出来た。わざと力を緩められていたと言うことは、言葉通り終わりなのかもしれない。尻に、あんなものを入れておいて?本当に、そんなことが有り得るのだろうか。
「さ、身なり整えて。そろそろ下りるんでしょ」
「ちょ…っ、待っ、待て!これ、ぬ、抜けよ!」
男はどうやら本気らしかった。冗談じゃない。こんなものを入れて家には帰れない。動けば、中でモノがずれて擦れるのが気持ち悪い。抜けと言っても男は軽くいなして、強制的にズボンを穿き直させてくる。するとその時、携帯が着信を訴えた。一瞬の隙をついて、男が取りあげ、通話を開始させると耳に押し当ててくる。
『ああ、花村。悪いんだが、少し遅れても大丈夫か?』
「あ、あの、義間さ…ッ、ぅぁっ!」
カチッと幻聴でもなくスイッチが入る音と共に、中で玩具が暴れ始める。急に言葉が切れた俺を、義間さんが不思議そうに心配してくれるのが聞こえる。嫌だった。恥ずかしかった。隣の男が小さな声で「濡れてきたね」と目を背けたくなるような事実を囁き、性器を扱きだす。
「ぅ、あっ…や、義間さ、ぁっお、俺っあっあう!」
『おい、何があった?やっぱりすぐ行くから待ってろ』
「っひ!ぁっ、やめ、お願、やめて、や、やだ…っ」
俺は義間さんに聞こえないように必死で携帯を口から遠ざける。けれど男の手は激しくなり、体の中の玩具も強さを増してその存在を主張してきた。頭がどうにかなってしまっているに違いない。痺れるような感覚が全身に広がって、コントロールが出来ない。
「だ、だめぇ…ッ、うっ、いっ、出ちゃ、ぁ…ッ、あ、あ、んんっ……ぅ、くっ、あっあぁ…!」
もう抑えることも出来ず、俺は派手に声をあげて射精させられた。絶望感に目の前が真っ暗になる。小さく義間さんが叫んでいるような音がキンキン聞こえた。
「ああ、とても可愛かったよ。ありがとう」
ずぅっと全てを見ていたストーカー男は、それだけ告げて、初めて俺の額に触れた。髪を軽く撫でるようにして、手に付着していた白く濁った精液をなすりつけて。



150618
リクエストありがとうございました。

 


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