「慎ちゃん居る?」 廊下から姉さんの声がした。 「居ますよ、どうしたんスか?」 するとスパーンと襖があいて、姉さんが入ってきた。 ・・・はず。 「ね、散歩しよ?」 声は確かに姉さんなのに・・・。 「な、な、何スか?その姿は?!」 思わず声が裏返る。 そこには、まるで青年志士みたいな姿の姉さんが・・・! 「どう?結構似合うでしょ?」 とても満足気に答える、姉さん。 ホンっと、考えが全然読めないっス!! 「に、似合う?っていうか、なんでそんな姿に!」 「え?だって・・・これなら、慎ちゃんと並んで歩けるかなーって」 少し顔を赤らめて話す姉さん・・。 そういえば、姉さんがいたとこでは男女で並んで歩くのが普通だと・・・。 以前、話していたことを思い出す。 「・・・おれと?」 「ほら、やっぱり好きな人とは並んで歩きたいの!」 そこまで言うと、耳まで真っ赤の姉さん・・・。 いや、きっと俺も顔が赤い。 『好きな人』 そんな言葉を、そんな可愛い顔で言われたら、完敗ッス。 「・・・今日だけッスよ、そんな男みたいな恰好は」 浮き立つ気持ちを抑えるように、仕方ない・・・ と、ため息をついて返事をしてみる。 「やった!ありがと慎ちゃん!早く行こ?」 満面の笑みで俺の手を引く。 せっかくの姉さんからのお誘い。 たまには、こんな姿で出かけるのも楽しいかもしれないっスね。 まさか、後日に 「中岡〜、おまん、男好いちゅうぜよったのか?」 などと、龍馬さんからあらぬ誤解を受けるとは、 この時は思いもしなかったッスけどね・・・・。 |