\南倉/ | ナノ
ときめき☆南倉リアル
えい子と小冬と咲で南倉布教!
この人には適わない / えい子
11/09/18(Sun) 11:13
「おーい、倉間ぁ」
3限目の授業が終わり、騒つく教室内。 その中に響いたのは、1つ上の先輩が俺の名前を呼ぶ声だった。
「なんすか、南沢さん」
出入口で気だるそうに扉にもたれかかる南沢さんの姿を見てすぐに駆け寄る。 そして、近づいたとたんズシリと頭の上に乗せられた重たい物体。
「これサンキュー。助かった」
重たい物体の正体はただの英語の辞書。 朝登校してたら、たまたま南沢さんに会って英語の辞書を忘れたとぼやいていたから貸してあげたのだ。英語の辞書なら学年違うとか関係ないし。 未だに頭に乗っかっている辞書を「身長伸びなくなるんでやめてください」と言いながら半ば乱暴に引ったくる。
「…へぇ?お前まだ伸びるつもりだったんだな」 「当たり前っす。とりあえず南沢さんの身長を超えるのが今の目標っすかね」
南沢さんの嫌味ったらしい笑顔にいちいち反応するのも面倒くさくて、俺はなるべく冷静に応える。 この人は本当に俺の身長をからかうのが好きで、毎回毎回怒るのも疲れてきた。俺だって成長期な訳だし、身長だってまだまだ伸びたいし。 それに、この人と同じポジションである以上、同じ目線で立ちたいって思うのは当然だと思うんだけど。…なんだかんだ言って南沢さんのこと尊敬してるし、俺。
「うーん…、まぁ、お前の成長期に免じて多少伸びるのは許してやろう。だけどな、お前は俺よりデカくなるなよ」 「……アンタは何様なんだよ」
あまりにも上から目線過ぎて思わず吹き出してしまった。 南沢さんに俺の身長決められる訳ないのに、何故か「それでもいいか」なんてほだされてしまっている自分がいて、結局俺はこの人に甘いのだと改めて思わされる。
気付くとクラスは次の授業へ向けて動き始めていた。次の授業は確か数学だったはず。俺も自分の席に戻ろうと思って南沢さんに挨拶しようと思ったらあの人が先に口を開いてこう言った。
「だって、小さいほうが可愛いだろ?」 「……………は、」
何のことか分からず目を見開いていたけど、最後に頭をくしゃくしゃって撫でられて、怖いくらい整った顔で笑顔を向けられたら、なんかもう、色々恥ずかしくてたまらなくなって俺は赤い顔を隠しながらそそくさと自分の席へと戻ったのだった。
この人には適わない
(俺にデカくなるなってことか…?)
――――――――― 小さいもの好きなのは私です。
白昼夢 / 咲
11/09/14(Wed) 06:24
夢を見た。 あの人は10を背負った背中をこちらに向けて、去っていってしまった。 待ってと追いかけても、どんなに必死に走っても、歩くその背中に追いつくことができなかった。むしろどんどん距離が開いてく。 そしてその背中は、次第に闇へと溶けるように消えて見えなくなってしまった。 追っていたものを見失い目標を失ったオレは、悩みさ迷い、それでも見えない背中を追う夢だ。
夢から覚めた。 この一連の出来事は夢の中の出来事であったはずなのに。 現実は、夢と何一つ変わっちゃいなかった。
10を背負った背中がフィールドを駆け抜ける。 あいつは上手い。オレよりも、そして恐らくあの人よりも。 雷門の勝敗の鍵を握る奴の実力は、まさしくエースナンバーである10を背負うべき人物なのだろう。
でも、オレは煮え切れないでいた。 雷門の10を今まで背負ってきたあの人の姿が脳裏に焼き付いていて離れない。
勝敗指示が出た試合でも、あの人の隣でサッカーをすることが楽しかった。隣で喜びや苦悩をわかち合い、時に下らない冗談を言い合い、偉そうにオレの頭をぐしゃぐしゃと撫で回すあの人が、好きだった。
その番号は、お前のじゃない。
白昼夢
その番号は南沢さんのものだ。
(今日もあなたの姿を焦がれて夢を見る)
--------- 夢の中でも夢を見れないくらいに南沢離脱のショックを倉間が受けてたらいいですよね。
倉間と速水 / 小冬
11/09/14(Wed) 03:20
「なんでそうなんですかぁ…」
そんな情けない声を出した速水は、普段から下がり気味の眉をぎゅっと寄せ、細長い手で細長い足を抱えた。 2人で隣同士に座るベンチの上に、速水が汚れることも構わずそこに靴のまま足を乗せたことが少し意外だったのは、それを俺や浜野がやるといつも「公共物ですよ」とその行為を咎めるからだ。 速水は土で汚れたベンチなど全く気にする様子もない。
「なんでって、意味ねーし」
「あ、ありますよ…!」
「いや、ないから」
「なんでそうなんですかぁ…」
それはさっきも聞いた。二度目だ。 なんでも速水は、俺に落ち込んで欲しいんだそうだが、生憎そんな暇はない。 松風を相手にボールを蹴る背番号10番に、無意識に握った拳が、その持ち主が去ったあの日を思い出させる。 そうだ、感傷に浸る意味なんてない。
「倉間くんがそれじゃあ、俺たち慰めることも出来ないじゃないですか…」
いっそのこと泣いてくれればいいのに、なんて呟く速水の頭を軽く叩き、俺はベンチから立ち上がりグラウンドへと足を踏み出した。
戻ってくるんだ、あの人は。
だから落ち込むことに意味はないし、慰められる理由もない。 それに、俺は絶対に泣いたりするつもりはないのだ。
だって泣くだなんて、まるであの人がもう二度と戻ってこないと、自ら肯定したようなものじゃないか。
涙が死んだの
(あなたが殺した)
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 南沢さんの名前が一回も出てこなくてびっくりしました
不可抗力です。 / えい子
11/09/09(Fri) 23:08
厳しい暑さも過ぎ去り、秋の気配が近づいてきた放課後。 あんなに煩かった蝉の鳴き声は完全に聞こえなくなり、代わりに秋特有の虫の声が鳴くようになっていた。
いつものように俺は部活をするためにサッカー棟へ向かう。 両隣には速水と浜野。 教室からずっと我慢してたけど、もう限界だ。俺は前髪の違和感に耐えきれなくなって思わず声を漏らした。
「……なぁ、コレ…もう取っていいか?」 「いやいや、ダメっしょ〜」 「倉間くん…それ取ったら更に罰ゲームがあるって言ってましたよ、女子たち」 「マジか」
日頃から左目に覆い被さっている髪の毛は現在黒のヘアピンによって持ち上げられている。何故このようなことになっているのかと言うと、ついさっきクラスの女子にやられたのだ。
「倉間って前髪邪魔じゃない?」とかなんとか言って黒のヘアピンを出したと思ったらあっという間に前髪を上げられた。 ちなみに「それ部活が終わるまでやっててね!途中で取ったりしたら罰ゲームだから!」なんてことを言っていた……気がする。 女子たちが浜野と速水に何か言ったと思ったら、そのまま彼女たちは帰っていった。
「うああ…、すっげぇ違和感!」 「…確かに倉間くんの両目見る機会あんまりないですもんね」 「違和感あるからってピン取るなよ〜!女子たちの罰ゲーム、おっそろしいからさ」 「…その………」
「罰ゲームって何?」と続くはずだった言葉は前から歩いてきた人物によって遮られた。
「うっわ……、倉間?」 「……げ、南沢さん」
嫌なときに会ってしまった、と内心舌打ちしながら軽く会釈をする。隣では浜野と速水が挨拶を交わしていた。
「珍しいな、お前がそんな髪型してんの」 「別に好きでやってる訳じゃないっすよ」
「へぇー?」なんて言いながら少し屈んで俺の顔を結構な至近距離で見つめる南沢さんに少しだけドキリとする。 誰だってあんな整った顔に見つめられたら緊張するっての。
「…なんで取らねーの?」
南沢さんの質問に答えようと口を開いたら「それはですねー!」と横やりを入れる浜野。 すると南沢さんはやっと離れて浜野や速水へと視線を動かした。
かくかくしかじかと事情を説明する浜野と速水に頷きながら状況を把握する南沢さん。 そして浜野は最後に罰ゲームの内容を俺には聞こえないようにそっと耳打ちしたのだった。
「……なぁ、なんで教えてくんねーの?罰ゲームの内容」 「…倉間くんのためですよ」 「うんうん。俺たちは倉間が罰ゲーム受けないように監視してるって訳さ〜」
何度聞いても教えてくれない2人に拗ねるように尋ねても答えは相変わらずNoのままで。 ちらりと南沢さんを見れば、にやりと黒い笑みを向けられた。
「……?」 「そうだよな、1人だけ教えてもらえないなんてフェアじゃねーよなぁ?倉間」
怪しい笑みのまま俺に近づいてきたと思ったら、南沢さんはそのままそっと俺の前髪についていた黒いヘアピンを取ってしまった。 まだ、部活が終わってもいないのに。
「「…………あ」」
浜野と速水が同時に声を上げるが時すでに遅し。俺の前髪は重力に従ってストンといつものように左目を覆った。
「…あ〜あ。南沢さん、やっちゃった〜」 「やばいですよぉ〜」 「……は?何がヤバいんだよ??罰ゲームそんなにヤベーの?」 「……やばいっちゅーか……」
言い難そうに浜野が南沢さんへと視線を動かすと南沢さんは満足そうな笑顔でゆっくりと口を開いた。
「だって俺もお前の罰ゲーム姿見たいからな」 「……は、…え?罰ゲーム……、姿…???」
罰ゲーム『姿』と聞いた瞬間、嫌な汗が背中を伝ったのが分かった。
「………は、浜野…。もしかして女子が言ってた罰ゲームって………」 「もしヘアピン取ったら倉間に女装させるって」 「……………っっ!?」
不可抗力です。
この後、まるで断末魔のような俺の叫びが辺りにこだましたのは言うまでもない。
―――――――――― 長ったらしい文章でごめんなさい/(^O^)\
燻る感情 / 咲
11/09/06(Tue) 13:49
いつもは特にやることもないので帰りのショートホームルームが終われば直ぐ帰るが、今日はクラスの係でやることがあったため、帰りが少し遅くなってしまった。 部活動をしている校庭とは逆に、放課後特有の静かな教室に扉の音を響かせ、そこを出る。
校舎を出れば、懐かしい声が校庭に響くのが聞こえてきた。二年間ほど、ほぼ毎日踏んでいたフィールド、見慣れた風景。 つい最近までやっていたというのに、改めて眺望すると随分と久々に感じる。 いや、退部してから見渡すのは初めてだったか。意識的に見ないようにしていた、と言うのが正しいかもしれない。
見慣れたメンバーたちが必殺タクティクスの練習に励んでいた。
そこにはもちろん、あいつ、倉間もいる。
フィールドを駆け抜け、ボールを保持しながらゴールに向かって行く姿に、迷いは感じられなかった。
何故だか少しの安堵と虚無感に似た違和感が、胸の内でじわじわと質量を増していく。
あいつはちゃんとサッカーと向き合って、俺とは違う道を選んだ。
それでいい。 それでいいはずだ。
自分から居なくなったというのに。
燻る感情
(そこに居ていいのは俺じゃない)
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日記で騒いでいた嫉妬沢先輩でした。倉間がサッカー頑張っている姿を見て方向性のない嫉妬してるに違いないです。
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