放課後になると学校は色んな音で満ち溢れる。 生徒の帰宅する足音 友人らとふざけ合う声 運動部の掛け声 そして、楽器の音 あらゆる場所から鳴る音は混ざり合い、それは男子バレーボール部が練習するこの場所…第三体育館にも聞こえてくる。 ここは学校や。 公式試合ならまだしも練習中に“俺がサーブ打つ時は静かにせぇ!!”って言うのは流石に自分勝手だというのはわかってる。 ……いや、練習中試合では言うたか。 まぁ、とにかく普通の練習中は我慢するしかない。 「ほんま喧しいねん…」 と溢したのも束の間。 心地のいい音色が風に乗ってやってきた。 優しくて暖かくて。 音楽には詳しくないが、素人の俺でもこれが綺麗な音やってことはわかる。 結局、そのBGMを聴きながらサーブ練を終えたけど、一度も耳障りだと思うこともなく、そんなん初めてやった。 多分、この音は体育館裏から鳴ってる。 どないしたん?と尋ねてくる仲間にちょっと忘れ物!と適当に返し、小走りで体育館を抜け出す。 どうしても気になってしゃあなかった。 キョロキョロと見渡し、音を辿る。 聴こえてくる方へ足を進めれば、その音はどんどん大きくなる。 この角曲がった先か…… 影からそっと覗き込むとそこにいたのは、 「天使…」 青空の下で楽しそうに楽器を奏でる女の子やった。 「なんか、めっちゃドキドキする」 宮侑は高校1年生の夏、初めて一目惚れをした。 △ back ▽ |