癒し系マネージャーのあの子は | ナノ

 従姉妹に連れられて

「名前!こっちこっち!」
「アンリちゃん、久しぶりー!」



自分と同じ赤毛の従姉妹を見つけて片手を上げる。

土曜日。
学校が休みの今日はアンリちゃんと会う約束をしていた。
少し歳の離れたアンリちゃんは一人っ子の私にとってはお姉ちゃんのような人だ。彼女には何でも言えて、ありのままの自分で接することができる数少ない存在である。



「最近、学校はどう?」
「んー…別に普通かな?毎日同じことの繰り返しだよ。転校したばかりの頃はチヤホヤされるのも面白かったけど、続くと面倒だよね」
「うそ、まだ続いてるの?」



驚くアンリちゃんにコクリと頷く。

“帰国子女”
よっぽど珍しいのか転校したばかりの頃、漫画のように色んな人達がクラスに押し寄せてきたのは今だに忘れられない出来事だ。
“まるで動物園のパンダになったみたい”とアンリちゃんにも連絡したような気がする。



「たった2-3年しかいなかったのに帰国子女って言うのかなぁ」
「名前の場合、容姿も目立つからねぇ…」
「結局顔じゃん、それ」



そう言うとアンリちゃんは苦笑いをした。
一体、私の内面を見ようとしてくれる人はその中でどれほどいるのだろう。
学校ではニコニコと上部だけは良くして過ごしているが、本当はこんな捻くれた部分があるなんて彼らは思ってもいないだろう。



「まぁ、アンタの伝説はよくお母さんから聞いてるわ。あっ勉強は?来年受験生でしょ?」
「勉強も特には問題ないよ。上位10位以内はキープしてるから多分、推薦もらうかなぁ。どこかに留学とか海外行くのもいいのかも」
「留学?」



アンリちゃんの目がキラリと光ったような気がした。
何かを期待しているような目だ。
だけど、“彼”のいる場所へ行くつもりはない。

もちろん行ったことのない国にね、と付け加えると、わかりやすく残念そうにしていたのは気づかなかったことにしよう…



「やっぱり海外の方が名前には合う?」
「そうだね…、日本はできることが限られてるからちょっと窮屈かも。海外の方が自由だよね」
「流石、帝襟家の期待の星だわ」
「もうそれはやめてよ…」
「ふふっ。えっと…もっと色々聞きたいこともあるんだけど、そろそろいきましょうか!」



そういえば、先ほどから質問攻めに合っていたなぁ…
女子同士、集まれば話は尽きないものである。



「今日は何を食べさせてくれるの?」
「えー……と…、それは着いてからのお楽しみよ!」
「えぇーなに、ハードル上がっちゃう」



タクシーを捕まえるアンリちゃんにここからまた移動?と一瞬疑問に思ったが、お腹を空かせた私は先に乗り込んだ彼女に続いて大人しく乗り込んだ。

よく考えれば、いつもよりも饒舌だったとかやけに学校のことを聞いてくるとか普段の彼女と違うと気付いたんだろうけど…どうして、ここでついて行ってしまったんだろう…












____________________________


「やぁやぁよく来たな。君がアンリちゃんの従姉妹の帝襟名前か」
「……ここどこ。あの人誰、アンリちゃん」
「ん?もしかして何も聞いてない?」
「えへへ…」



飲食店等には決して見えないモニターの数々にカップ焼きそばをズルズルと啜る男。
そこから私は横にいるアンリちゃんに目を向けた。
会話からしてきっと2人は知り合いなのだろう。
だけど、“何も聞いてない”とは…?



「俺は絵心甚八。日本をW杯優勝をさせるために日本フットボール連合に雇われた人間だ」
「JFU?」



W杯
日本フットボール連合

絵心と名乗った目の前の男の言葉にわずかに眉を顰める。
ニコリと笑みを浮かべて絵心さんにこう返した。



「日本フットボール連合…ということはアンリちゃんの上司さんですか?アンリちゃん、ランチ前に職場に寄るなら言ってよぉ。ていうか、部外者の私が入ってきてよかったの?」
「いや、あのね。違うのよ…」
「俺が用があったのは君だ。帝襟名前ちゃん。アンリちゃんに言ってここに連れて来てもらった」
「…私に用ですか?」



もっと馬鹿な女を演じればよかったかも知れない。
何だか嫌な予感がすると勘づいてしまうのは私の良いところでもあり、悪いところでもある。



「日本サッカーが世界一になるため必要なのはただ一つ……革命的なストライカーの誕生です」
「はぁ…」
「俺は300人の中から世界一のストライカーを創る実験をする。そのための施設…このブルーロックで」






「そして、君は選ばれたんだよ。ブルーロックのマネージャーに」






「は…?」
「ということで、これからよろしくね」




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