01


どうしたの?何で泣いているんだ?

ふええ、いなくなったああ

…迷子?


学校帰りの途中、可笑しな奴を見つけた。
道をはいはいのような状態で進むそれは不審者同然。
何か探し物をするかのように少し進んでは止まり辺りをじっと睨みつけ、そしてまた少し進み辺りを見渡す、といった感じだった。怪しい。これでもかって程怪しい。
一歩間違えれば通報されてしまいそうな行動を取っている人物は、よく見れば自分と同じ制服を着ていた。だからという訳じゃないけど。

「アンタこんなとこで何してんの?」

ちょっとした好奇心が、初めてその人を発見したときの感情よりも勝ったので気付けば声を掛けていた。
その人はワンテンポ遅れて顔を上げる。

「……俺か?」

「アンタ以外に誰がいんの」

「いや…」

辺りを見渡して漸く相手が発した言葉に思わず変な顔をしてしまった。
こんな所で何やってるんだなんて聞かれるような行動取ってる人、どう見たってこの人以外にいないのに。いや、まず今この道には俺とこの人の姿しか無い。

「それで、俺がどうした?」

「いや、だから何してんのって」

座り込んだままで、まるで自分が普通だとでも言うかのように聞き返すので俺のほうが呆気に取られてしまう。相手はと言えば、顎に手をおいて考えこむようにした後「ああ」と口を開いた。

「ちょっとした探し物だ」

「ふーん」

まるで取って付けたかのような理由に、思わず疑いの目で見てしまう。まあ、会って間もない俺にそんなぺらぺらと素直に喋るはずもない。俺だったら、知らない奴に詮索なんてされたく無いし。あれ?なんで声掛けたんだ、俺。

「…気になったか?」

ふと自分の行動に疑問を抱いている間に、相手が話しかけてきた。
目に入ったのは事実だし、無視出来ない程には不審だったので素直に頷く。

「何探してんのか知らねえけど、あんまやってっと通報されちまうぜ?」

「ふふ、そんなに怪しかったか」

「むしろ俺が通報してやろうかと思った」

「それは勘弁してくれ」

苦笑いしながら首を横に振る相手に「冗談冗談」と笑う。
笑えない冗談だ、なんて言いながらも相手もくすくすと笑った。

「なあ、アンタその制服着てるってことは立海だろ?名前教えてよ」

「唐突な奴だな。…3年、柳蓮二だ」

柳蓮二、と心の中で反復する。…よし、覚えた。
しかし名前とは別にとんでもない事実が発覚したような気がする。
俺はもう1度相手の言葉を繰り返して、そして気付いた。

「え、3年?!」

「ああ、そうだ。反応から見るに、どうやら後輩らしいな」

俺を見上げて柳、さんがくすくすと笑う。
そんな楽しそうに笑いながらも「後輩なら言葉遣いには気をつけないとな」だなんて言うのだから、案外この人は意地悪な人なのかもしれない。
俺はうっと詰まる事しか出来なかった。

「お前の名前も聞こうか」

たじたじとしていた俺に、さっきまでの事など気にもしていないかのように話しかけてくる彼。敬語とか気にしなくてもいいのだろうか。

「2年、切原赤也!ちゃんと覚えろよ…ってえ!」

「言葉遣い」

俺の考えが甘かったらしい。
すっと立ち上がった柳さんに容赦なくでこピンされた。地味に凄く痛い。

「す…すみませんっス…」

「わかればよろしい」

柳さんは、今まで膝を付けて進んでいた為に汚れてしまっていたズボンを払った。

「家はこっちの方なのか?」

「うぃっす。あ、もしかして家近かったり?」

「かもしれないな」

そんな他愛無い話をしながら帰路を進んだ。途中、柳さんが「じゃあ、俺はこっちだから」と曲がり角を曲がってしまうまでそれは続いた。
その曲がり角は結構俺の家から近いところで、本当に近所に住んでいるのかもしれないという考えに至る。それでも登校時に姿を見たことが無いのだから、恐らくあの人は帰宅部か何かなのだろう。それなら、いつも朝練やらなんやらで家を出るのが比較的に早い俺と会ったことがないというのも頷ける。
今度会った時は連絡先を聞いてみよう。同じ学校なのだから、会おうと思えばいつでも会えるのだろうけれど、何となくあの人の連絡先は知っておきたかった。

1人になった帰り道。
面白い人と友達になった俺は、いつもより軽い足取りで家を目指したのだった。

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