キャラルラ(ディミ←レト)
2020/02/18
※レスレト双子軸
※レス先生が黒鷲、レト先生が青獅子を選んだ世界線
※レス先生だけ炎の紋章持ち

 ああ、来ないで欲しいな。その橄欖石色の髪を見ながらぼんやり思う。来るな、来るな、と思うのは何故だろう。双子の姉だから? かつて身体をつなげたことのある女だから? いいや違う、俺が彼女に勝てないことを本能で悟っているからだ。彗星のように敵を切り伏せ俺たちに猛進してくるベレスを見ながらぼんやり思う。運命とは、どれだけ残酷な者なのだろう。そ、と隣のディミトリを見た。ディミトリは険しい顔をしている。その目は一心にエーデルガルとに向けられている。手にある剣を強く握る。運命とは、残酷だ。双子同士で殺し合わなければいけない。どれだけこの子のために尽くしてもこの子は俺を見ない。頭を振る。考えるな。俺はただ剣を振ればいい。この子のために剣を振ればいい。負けることが分かっていたとしても、俺は戦わねばならない。愛しいこの子のために。愛しい男のために。地を蹴り、こちらに向かってくるベレスに斬りかかる。ああ分かっている、俺はただの人殺しだ。ただの灰色の悪魔だ。救世主には、なれない。なのに、何故こんなにも胸が痛いのだろうか。ずきりと痛む心臓をそのままに、俺はベレスへと剣を振り上げた。


ディミレト
2020/02/18
 人っていうのは気持ちいいことに弱い。気持ちよければなんだかいい気分になるし相手を許してやってもいいかなという気になる。ふわふわ、ふわふわ、まるで穏やかな海に漂っているような様子で揺さぶられるがままになる。勝手にあ、あ、と高い声が上がっていたけどそれが気にならないくらい気持ちよかった。今まで女を抱いたことも、男に抱かれたこともなかったからこんな感覚が自分の中にあるだなんて知らなかった。灰色の悪魔も結局は人の子だったということだろうか。だくだくと流したいわけでもないのに涙が溢れ、視界がぶれる。そのぼやけた視界の中で、この子はただただつらそうな顔をしていた。やっぱり男の身体なんて気持ちよくないんだろうかと思ったけれどいれられているものはしっかり勃起しているし一度射精だってしている。なのに何故そんなつらそうな顔をするのだろうと思ってその頬に手を伸ばしたいのにさっきから身体が言うことを聞いてくれない。この子が淹れた茶を飲んでからこうなったから何か盛られたなと漠然と理解する。そんなことしなくたって、俺の身体くらいいくらだって明け渡すのに。あ、あ、という情けない嬌声の合間を縫って、この子が謝る。すまない、先生、ゆるさなくていいから。そう言ってこの子は俺の頬を撫でた。ゆるさなくていいから、俺に一夜だけの思い出をくれ。一夜と言わず、お前にならばいつだって抱かれたっていいのに。そう伝えるはずの口からは甲高い嬌声が上がるばかりで言葉なんてろくに吐けない。ああ、俺たち、言葉が足りな過ぎたな。好きくらい、正直に言えばよかったんだ。快感からではない涙がぽろりと伝って、それはシーツに吸い込まれて跡形もなく消えていった。明日はディミトリの結婚式だ。


ディミレト
2020/02/15
 ああ、ここで終わりなのだろうな。ただ漠然とそう思う。喉からせり上がってくる熱いものをそのまま吐き出せば顔が真っ赤に染まった。仰向けに倒れているから、吐き出したものがだらだらと俺の呼吸を圧迫して自分の血で溺れそうになる。霞む目でぼんやりと空を眺める。青い。青い。あの子と同じ色だ。それだけで、何故か救われた気になる。救われた。悪魔と呼ばれた自分がそんなことを思うだなんて考えてもみなかった。いつだって殺した。言われるがままに。なんだって殺した。求められるがままに。そこに感情が負荷したことなんてなかった。ただ、あの子と出会ってからは。あの子を守るために戦おうと思った。あの子を生かすために戦おうと思った。だからこの結果には満足している。俺がいなくともあの子は大丈夫だ。確かに今のあの子の目は何も映していないけれど、でも確かにあの子には仲間がいるから。きっと大丈夫。俺がいなくとも大丈夫。暴れるあの子を必死に取り押さえて撤退していった元生徒たちを思う。大丈夫、お前たちがいるのならば、俺は安心して逝ける。自分がこんな穏やかな最期を迎えられるとは思っていなくて、思わず笑声が喉から零れ落ちた。ああ、幸せだなあ。誰かを守って死ぬことが、こんなにも幸せだなんて思っていなかった。くすくす笑って、闇へと沈んでいく意識へとそっと寄り添う。恐怖はない。あるのは、あの子はきっと大丈夫だという安堵だけだ。
 大丈夫、お前はひとりじゃないよ、ディミトリ。
 目を閉じる寸前、目が覚めるような青を、確かに見た気がした。


レトレス前提ディミレト
2020/02/07
 夢幻。白昼夢。そういうものだったらどれだけよかったことだろう。がしゃん、と自分の掌から茶器が零れ落ちるのを呆然と聞いていた。教師になってから、私もベレトもよくみんなと茶会をするようになった。傭兵の時は紅茶なんて飲んだことなかったのに、二人で顔を寄せ合ってこの茶葉がいい、この茶葉も飲ませたい、だなんて囁きあっていた。今日だってベレトは、この茶葉はディミトリが好きなんだ、と弾んだ声で言っていて。だから、じゃあ私も新しい茶器を買ったからベレトに貸してあげる、って言ったのに。その茶器は今無惨に地面に叩きつけられて粉々になっている。まるで私の心みたい。その音に気が付いたベレトが弾かれたように振り向いて、私と同じ色をした目を見開いている。対してディミトリは冷静だった。まっすぐに私の方を見詰めて、その青い眸が悠然と私に宣戦布告をする。その目を見て、私の中で何かが爆ぜた。こんな衝動は初めてだ。私は今まで仕事で、命令で殺していただけで、そこに自分の意志なんて存在しなかった。けれど、今私の胸の中には明確な殺意がある。私の弟に口づけをし、あまつさえ私から弟を取り上げようとする男に対しての明確な殺意が。ぎ、と私もディミトリを睨みつける。私とディミトリの間で、ベレトは戸惑うように視線を彷徨わせていた。渡してたまるものか。こぶしを握り締める。この弟は、この男は、私の男だ。決して誰かの男にしてはならない。だって私はベレトでベレトは私、私たちは同じ胎から生まれた双子なのだから。ね、ベレトだって、そう思うでしょう?


ディミレト
2020/02/06

 その目がすきだ。青くて空みたいにすきとおったその目がすきだ。ちょっと色が濃すぎるけど及第点。大丈夫、どうせ涙に濡れてうすいいろになるから。
 その髪がすきだ。きらきらと星みたいに輝くその髪がすきだ。ちょっと癖がついているけど及第点。大丈夫、どうせ汗に濡れてまっすぐになるから。
 目が二つあるけどそれもしょうがない。一晩だけの相手に突然右目をえぐられては相手もたまったものではないだろう。だから我慢。髪に隠れてくれればいいなとちょっと思う。
 髪が短いのもしょうがない。一夜だけ髪が伸びるだなんてそんな御伽話みたいなこと、こんな不完全な宿には訪れない。揺さぶられている間に、その金色の髪が揺れればいいなとちょっと思う。
 丁寧にそれを舐めれば優しく耳を撫でられる。視線を上げれば青色の目と金色の髪が見える。暗がりの中、それはほんの少しだけ彼にみえた。舌を絡ませ、手を動かせば、相手はもう耐えられないと言ったふうに俺を押し倒して口づけをしてきた。距離がゼロになって、ますます彼と相手の境界線がなくなる。それでいいと思う。それを望んでいたのだから。俺は進んで舌を絡ませ、そっと相手の性器を自分のそこに導いた。はあはあと犬のように荒い息が上から降りかかる。先生って呼んで、と言えば、相手は興奮しながら先生先生と俺を呼んでそれを俺のなかに突き立てた。先生。似ても似つかない声が俺を呼ぶ。揺れる視界の中で、こんじきの髪が俺を憐むようにきらめいていた。

  

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